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  著作権法条文解説
  著作権法第101条(実演、レコード、放送又は有線放送の保護期間):
  
  「1 著作隣接権の存続期間は、次に掲げる時に始まる。
  [1] 実演に関しては、その実演を行つた時
  [2] レコードに関しては、その音を最初に固定した時
  [3] 放送に関しては、その放送を行つた時
  [4] 有線放送に関しては、その有線放送を行つた時
  2 著作隣接権の存続期間は、次に掲げる時をもつて満了する。
  [1] 実演に関しては、その実演が行われた日の属する年の翌年から起算して70年を経過した時
  [2] レコードに関しては、その発行が行われた日の属する年の翌年から起算して70年(その音が最初に固定された日の属する年の翌年から起算して70年を経過する時までの間に発行されなかつたときは、その音が最初に固定された日の属する年の翌年から起算して70年)を経過した時
  [3] 放送に関しては、その放送が行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過した時
  [4] 有線放送に関しては、その有線放送が行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過した時」
  
  ▶ 著作隣接権の存続期間
  
  本条は、実演、レコード、放送及び有線放送の保護期間、すなわち著作隣接権の存続期間について規定したものです。
  著作権の存続期間(51条、54条等、ベルヌ条約7条参照)の場合と同様に、著作隣接権の存続期間についても、国際的な潮流は、著作権の存続期間と同様に、保護期間を延長する方向(「50年」→「70年」)に向かっています。
  著作隣接権の存続期間は、
  ① 「実演」に関しては、その「実演を行った時」、
  ② 「レコード」に関しては、その「音を最初に固定した時」、
  ③ 「放送・有線放送」に関しては、その「放送・有線放送を行った時」に、
  それぞれ開始します(1項1~4号)。
  
  そして、「実演」については、「その実演が行われた日の属する年の翌年から起算して70年を経過した時」をもって満了します(2項1号)。「放送・有線放送」については、「その放送・有線放送が行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過した時」をもって満了します(2項3号4号)。
  
  (例)
  2020年8月1日に行われた実演については、同日から保護が始まり、2021年から起算して70年後の2090年の12月31日まで保護されることになります。
  一方、「レコード」については、原則として、その音を最初に固定した時ではなく、「その発行が行われた日の属する年の翌年から起算して70年を経過した時」をもって満了する点に注意してください。もっとも、その音が最初に固定された日の属する年の翌年から起算して70年を経過するまでの間に当該レコードが発行されなかったときは、その音が最初に固定された日の属する年の翌年から起算して50年を経過した時に満了します(2項2号)。
  
  以上のようなかたちで著作隣接権が満了した後は、その目的となっていた「実演」・「レコード」・「放送」・「有線放送」は、いわゆる「パブリックドメイン」に帰し、社会全体の共有財産となります(誰でも自由にこれらを利用することができるようになります)(1条)。
  
  ▶実演家人格権の存続期間
  
  「実演家人格権」は一身専属の権利とされているため (101条の2)、実演家が死亡すれば実演家人格権も消滅します。つまり、実演家人格権の保護期間は、当該実演家の「生存している期間(だけ)」ということになります。もっとも、実演家の死後においても、原則として、「実演家が生存しているとしたならばその実演家人格権の侵害となるべき行為」をしてはならないことされていますので(101条の3)、この点は注意を要します。