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著作権法条文解説
著作権法第116条(著作者又は実演家の死後における人格的利益の保護のための措置):
「1 著作者又は実演家の死後においては、その遺族(死亡した著作者又は実演家の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹をいう。以下この条において同じ。)は、当該著作者又は実演家について第60条又は第101条の3の規定に違反する行為をする者又はするおそれがある者に対し第112条の請求を、故意又は過失により著作者人格権又は実演家人格権を侵害する行為又は第60条若しくは第101条の3の規定に違反する行為をした者に対し前条の請求をすることができる。
2 前項の請求をすることができる遺族の順位は、同項に規定する順序とする。ただし、著作者又は実演家が遺言によりその順位を別に定めた場合は、その順序とする。
3 著作者又は実演家は、遺言により、遺族に代えて第1項の請求をすることができる者を指定することができる。この場合において、その指定を受けた者は、当該著作者又は実演家の死亡の日の属する年の翌年から起算して70年を経過した後(その経過する時に遺族が存する場合にあつては、その存しなくなつた後)においては、その請求をすることができない。」
本条は、著作者又は実演家の死後におけるその人格的利益の保護を実効性のあるものとするために、著作者又は実演家の意思を最も的確に反映することができると考えられる者が、著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為に対し、差止請求又は名誉回復等の措置請求ができる旨を規定したものです。
著作者又は実演家の死後におけるその人格的利益の保護を保全すべき者としては、ずべての「遺族」とするのではなく、「配偶者」及び二親等内の血族(「子」、「父母」、「孫」、「祖父母」、「兄弟姉妹」)にその範囲を限定しつつ(1項)、著作者又は実演家が「遺言」によって当該遺族に代えて差止等を請求できる者を「指定」できる途も残しています(3項)。
所定の遺族がなしうる請求は、差止請求(112条)と名誉回復等の措置請求(115条)に限られ、損害賠償の請求はなしえないと解されます。もっとも、侵害行為によって遺族の固有の名誉感情が傷つけられた場合には、その固有の名誉感情が傷つけられた遺族は、侵害者に対し慰謝料の支払いを請求できるものと解されます(民法709条、同710条)。
差止等の請求をすることができる遺族の順位は、第1項に規定する順序とされていますが(2項)、先順位者(例えば、「配偶者」)が第1項に基づいた請求をしない場合には、後順位者(例えば、「子」)はもとより第1項に基づいた請求をすることはできないと解されます。