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著作権法条文解説

著作権法第118(無名又は変名の著作物に係る権利の保全)

1 無名又は変名の著作物の発行者は、その著作物の著作者又は著作権者のために、自己の名をもつて、第112条、第115条若しくは第116条第1項の請求又はその著作物の著作者人格権若しくは著作権の侵害に係る損害の賠償の請求若しくは不当利得の返還の請求を行なうことができる。ただし、著作者の変名がその者のものとして周知のものである場合及び第75条第1項の実名の登録があつた場合は、この限りでない。
2 無名又は変名の著作物の複製物にその実名又は周知の変名が発行者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の発行者と推定する。」

本条は、無名又は変名の著作物の権利者(著作者又は著作権者)が、その実名を明らかにすることなく、自己の権利を保全できる道を確保するため、権利者の意向を最も適切に代弁しうると考えられる当該著作物の発行者にそのような保全行為を行わせることを可能にするための規定です。条文上、本条に定める請求権を行使するか否かは、「発行者」の判断に委ねられると解されますが、実際には、権利者の意向を尊重して行使するか否かを決定することになるでしょう。
1項において、発行者は、「その著作物の著作者又は著作権者のために、自己の名をもって」各種の民事的な救済措置を請求することができ、これらの請求権は、無名又は変名の著作物の著作者が死亡した後でも、また、その著作者が自己の著作権を他人に譲渡した後でも行使できると解されます。
なお、当該裁判における確定判決等の効力は、「その著作物の著作者又は著作権者」にも及ぶことになります(民事訴訟法11512号参照)。