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著作権法条文解説
著作権法第12条の2(データベースの著作物):
「1 データベースでその情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。
2 前項の規定は、同項のデータベースの部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。」
著作権法第2条(定義)第1項:
「<ⅹ-3>データベース 論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。」
法12条の2は、データベースの著作物の概念を明らかにするとともに、データベースの著作物に対する保護は、そのデータベースの部分を構成する著作物の保護とは別個である旨を規定したものです。
「データベースの著作物」とは、「データベースでその情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するもの」をいいます(1項)。そして、「データベース」とは、「論文、数値、図形その他の情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」をいいます(2条1項10号の3)。つまり、「データベースの著作物」とは、端的に言ってしまうと、「編集著作物」(12条1項)のコンピュータ版のことです。
編集著作物と同様に、その全体で一つの著作物として保護されます(1項)。要点は、情報の「選択又は体系的な構成」、すなわち、コンピュータによって情報が容易に検索でき、蓄積された情報を効率的に利用するために、情報がどのように創意工夫を凝らして「選択」され又は「体系的に構成」されているかということです。なお、データベース著作物を構成する「情報」が著作物に限らないのは、編集著作物の場合と同様です。
データベースの著作物に対する保護は、その情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有すると認められる場合に、全体で1つの著作物として、著作権法上の保護を付与する建前です。したがって、データベースの著作物の著作者の権利は、当該データベースの部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼすことはありません。2項は、このことを確認的に規定したものです(TRIPS協定10条2、WIPO著作権条約5条参照)。つまり、データベースの著作物に対する保護は、そこに収録されている個々の著作物(情報)の保護とは別個独立したものであると解されます。例えば、データベースの著作物の保護期間は、その部分を構成する著作物とは別個に計算されます。また、データベースの著作物の全体利用については、当該データベースの著作物の著作権者の許諾のみでは足りず、これを構成する個々の著作物の著作権者の許諾をも必要とします。一方、データベースの著作物の著作者の権利が及ぶのは、あくまで当該データベースの著作物が全体(1つのまとまり)として利用された場合に限られるため、当該データベースの部分を構成する著作物が個別に利用されるにすぎない場合には、当該データベースの著作物の権利者から利用許諾を得る必要はなく、その個々の著作物の権利者からの利用許諾を得れば足りることになります。