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著作権法条文解説
著作権法第16条(映画の著作物の著作者):
「映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。ただし、前条の規定の適用がある場合は、この限りでない。」
本条は、映画の製作にはさまざまな著作物についての多数の著作者が関与し得ることから、映画の著作物の著作者について、その意義を予め明確にしておくために設けられた規定です。
全体的形成に創作的に寄与した者
映画の著作物の著作者は、「制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」とされています。具体的に誰がこれに該当するかは個々の映画について個別具体的に判断されることになりますが、通常は、プロデューサー、監督、撮影監督、美術監督、特殊撮影の監督などで、その映画に対して一貫したイメージを抱きそれを実現した者が映画の著作物の著作者とされます。したがって、助監督やカメラ助手などが映画の著作物の著作者に該当することはありません。なお、映画製作には、その性質上、非常に多くの人が関与しているため、その映画の「全体的形成に創作的に寄与した者」が複数人いる場合も多いと思われますが、その場合、その「各人の寄与を分離して個別的に利用することができない」事情があれば、当該映画は、「共同著作物」(2条1項12号)と評価され、共同著作物に特有の取り扱い(64条等)を受けることになります。
映画の著作物の著作者から除かれる者
「映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者」は、当該映画の著作物の著作者にはなりえません。その映画の原作となった小説や脚本(つまり、二次的著作物であるところの当該映画の著作物において翻案された原著作物であるところの小説や脚本)、その映画の中で利用(複製)されているBGMや美術作品などの著作物の著作者は、当該映画の著作物の著作者とは扱われません。彼らには、映画に利用(翻案・複製)された著作物の著作者として、当該映画の著作物の利用に関し、一定の権利が付与されています(前者については28条参照、後者については26条2項参照)。
なお、映画に出演している俳優については、「実演家」(2条1項4号)として著作隣接権(89条1項参照)による保護を受けますので、映画の著作物の著作者には当たりません。
ただし書きの意味
例えば、ドキュメンタリー映画を製作する映像会社が自社の従業員に映画を製作させた場合、「その映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」が当該従業員であっても、かかる映画の製作が法人著作(職務著作)の要件(15条)を満たすものであれば、その映画の著作者は、当該映像会社となります。これが本条ただし書きの意味するところです。