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著作権法条文解説

著作権法第2(定義)1項第5号・6号・7号:

1 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
<>レコード 蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう。
<>レコード製作者 レコードに固定されている音を最初に固定した者をいう。
<>商業用レコード 市販の目的をもつて製作されるレコードの複製物をいう。」

2条は、著作権法において重要な概念となる用語や頻繁に使用される用語の意義をあらかじめ明確に定めることにより、解釈上の疑義を極力避けることを狙った規定です。

著作権法上の「レコード」とは、「物に音を固定したもの」(5号)であり、それは、レコード盤、CD、録音テープ、オルゴール等の有体物のように「音を固定した物」をいうのではありません。これらの有体物に収録されている「音の存在」という概念が著作権法上の「レコード」であり、また、その「音」の内容如何も問いません(著作物に限りません)。例えば、小鳥や虫の鳴き声、各種の効果音のように、著作物に該当しない音を収録したものも「レコード」として保護されます。このように、著作権法上の「レコード」という概念は、日常語としての「レコード」の語感とはだいぶ違っていますので注意してください。ちなみに、一般に市販されているCDやレコードなどは、著作権法上は、「レコードの複製物」すなわち「商業用レコード」であって(7号)、「レコード」とは区別されています。なお、映画のサウンドトラックに固定されている音のように、「音を専ら影像とともに再生することを目的とするもの」は、「レコード」から除かれていますが、サウンドトラックから音を取り出してサントラ盤レコードに固定した音は「レコード」に該当します。
「レコード製作者」とは、一般に市販されているCD(=「商業用レコード」)のメーカーを指す概念ではなくて、著作権法上は、「レコードに固定されている音を最初に固定した者」をいいます(6号)。したがって、音を「最初に固定した者」ではない者、すなわち他人の固定した音を増製しただけの者、例えば原盤の提供を受けてリプレスしたに過ぎない者や商業用レコードの製作者は「レコード製作者」ではありません。また、「者」とは、自然人であると法人であるとを問いません。さらに、音を固定することを業としている者である必要もありません。例えば、演奏会や講演会の内容をテープやレコーダー等に最初に録音した者も、著作権法上は「レコード製作者」に該当することになります。こちらの概念も日常語としての「レコード製作者」とはだいぶ趣が違いますので注意してください。
「レコード製作者」の意義に関し、ローマ条約では、「実演その他の音を最初に固定する自然人又は法人」(同条約3(c))を意味するとしているのに対し、WIPO実演及びレコード条約では、「実演その他の音又は音を表すものを最初に固定することを主導し、かつ、それに対して責任をもつ(takes the initiative and has the responsibility for the first fixation)自然人又は法人」(同条約2(d))を意味するとしている点は、興味深いところです。