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著作権法条文解説
著作権法第26条の3(貸与権)
「著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。
▶著作権法第2条(定義)第8項
「8この法律にいう「貸与」には、いずれの名義又は方法をもつてするかを問わず、これと同様の使用の権原を取得させる行為を含むものとする。」
(参考) 「貸与権」は、レコードレンタル業の発達に対応するため、昭和 59(1984)年の法改正により導入された権利です。レンタル業のうち、当時の貸本業は零細な事業者が多く、事業者数もそう多くなかったことから、書籍・雑誌の貸与は、(主として楽譜により構成されているものを除いて)当分の間は貸与権が働かないこととされました**。
**昭和59年改正法附則4条の2(書籍等の貸与についての経過措置)は、新法第26条の3の規定は、書籍又は雑誌(主として楽譜により構成されているものを除く。)の貸与による場合には、当分の間、適用しない。」と規定した。
しかしながら、平成 15(2003)年ごろから大手事業者がコミックレンタル業に参入してきたことなどから、平成 16(2004)年に著作権法が改正され、他の著作物と同様、書籍等の貸与についても原則として権利者に無断でできないことになりました**。
**平成16年改正法附則4条(書籍等の貸与についての経過措置)は、「この法律の公布の日の属する月の翌々月の初日において現に公衆への貸与の目的をもって所持されている書籍又は雑誌(主として楽譜により構成されているものを除く。)の貸与については、改正前の著作権法附則第4条の2の規定は、この法律の施行後も、なおその効力を有する。」と規定している。
▶貸与権の意義
本条は、著作者が専有する貸与権について規定したものです。「貸与権」とは、著作物を、その「複製物」(映画の著作物に複製されている著作物にあっては当該著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供することを内容とする排他独占的な権利を意味します。
わが国の著作権法は、貸与権の客体を特定の著作物に限定することとはせず、映画の著作物を除くすべての著作物についてその種類を問わず一般的に貸与権を認めています。具体的には、レコード、CD、書籍、雑誌、パソコンソフトなどがすべて貸与権の対象となります。レンタルCD、レンタルソフトなどの行為には、著作権者(貸与権者)の許諾が必要になります。
貸与権は「公衆」に著作物を貸与する権利ですから、「公衆」以外の者、すなわち「特定少数」の者(2条5項参照)への貸与行為にはそもそも貸与権は働きません。また、映画の著作物について貸与権が適用されないのは、映画の著作物については貸与権を含む「頒布権」(26条)が認められているからです。したがって、映画の著作物の複製物を貸与する行為(例えば、レンタルビデオ(DVD)など)に当該映画の著作物の権利が及ばないというわけではありません(貸与権を含む「頒布権」が及ぶことになります。)。
本権利の中心的な概念である「貸与」には、いずれの名義又は方法をもってするかを問わず、貸与と同様の使用の権原を取得させる行為(つまり、実質的に貸与と同視しうる行為)を含むとされています(2条8項)。例えば、次のような行為は、通常、「貸与」に該当するものと解されます:
〇 レンタルCDショップが利用者にCDを売却し、数日後に一定の買戻し料(実質的にはレンタル料)を差し引いて買い戻す行為。
〇 会員組織にしてCDを共同購入したという形をとり、会員はレンタル料程度の会費を主催者であるレンタルCDショップに支払う行為。
なお、図書館などでの館外への書籍等の貸出しは「貸与」に該当しますが、「非営利」かつ「無料」の場合の貸与(ただし、映画の著作物の貸与を除く。)については、例外規定が定められています(38条4項参照。映画の著作物については同条5項参照)。