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著作権法条文解説

著作権法第47条の2(美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等)

「美術の著作物又は写真の著作物の原作品又は複製物の所有者その他のこれらの譲渡又は貸与の権原を有する者が、第26条の21項又は第26条の3に規定する権利を害することなく、その原作品又は複製物を譲渡し、又は貸与しようとする場合には、当該権原を有する者又はその委託を受けた者は、その申出の用に供するため、これらの著作物について、複製又は公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)(当該複製により作成される複製物を用いて行うこれらの著作物の複製又は当該公衆送信を受信して行うこれらの著作物の複製を防止し、又は抑止するための措置その他の著作権者の利益を不当に害しないための措置として政令で定める措置を講じて行うものに限る。)を行うことができる。」

▼ 意義と立法趣旨

本条は、美術又は写真の著作物の譲渡等の申出の用に供するため、これらの著作物についてその紹介用画像の掲載(複製又は自動公衆送信)を、著作権者の利益を不当に害しないための政令で定める措置(画像を一定以下の大きさ・精度(画素数)にすること等)を講じるとの条件の下で、これを許容することを規定したものです。要するに、美術品や写真について、インターネットオークションやネット通販など、対面で行われない取引をする際に、その商品画像の掲載(複製又は自動公衆送信)を行う場合の例外です。一定の要件が整えば、インターネットオークションやネット通販等での美術品や写真の画像(商品)掲載を無許諾で行えるということです。

近時、ネットを使ったオークション(インターネットオークション)が盛んに行われていますが、一方で、ネットオークションでの美術品や写真の紹介用画像の掲載については、これが当該美術品や写真の権利者の有する複製権や公衆送信権の侵害に当たる可能性のあることが指摘されていました。しかしながら、美術品や写真の取引(譲渡・貸与)自体が自由に行える場合、つまり、これらの譲渡権や貸与権を侵害することにならない場合に、当該美術品や写真の取引の際に商品情報として不可欠な紹介用画像の掲載については、複製権ないし公衆送信権を侵害するものとしてこれを禁止することは妥当ではありません。そこで、ネットオークション等での美術品又は写真の取引に際し、一定要件の下で、商品(出品作品)の紹介用の画像掲載等を自由に行えることとしました。もっとも、そのような画像掲載等が、商品取引(譲渡・貸与)の円滑妥当な実施という効果を超えて、美術品又は写真の正規の出版等に関する市場を圧迫することがないようにするため、本条で認められる複製又は公衆送信は、「著作権者の利益を不当に害しないための措置として政令で定める措置」(画像を一定以下の大きさ・精度(画素数)にすること等。著作権法施行令7条の2参照。)を講じて行われる場合に限って認めることとしています。

▼ 要件

本条の対象となる著作物は、展示権の制限を規定する法451項と同様に、「美術の著作物」と「写真の著作物」に限られます。そして、これらの「原作品」又は「複製物」についてその画像掲載等(複製又は公衆送信)が可能になります。

本条により複製又は公衆送信の主体(例外が認められる主体)となりうる者は、以下のいずれかの者に限られます:
    「原作品又は複製物の所有者その他のこれらの譲渡又は貸与の権原を有する者」原作品又は複製物の所有者その他のこれらの譲渡又は貸与の権原を有する者」→もともとの所有者やその代理人など。
    上記①の権原を有する者から、「その(原作品又は複製物の譲渡又は貸与について)委託を受けた者」→オークション事業者や委託販売を行う画廊(美術商)など。

本条は、有体物であるところの、美術の著作物又は写真の著作物の「原作品又は複製物」を取引(占有移転を伴う譲渡・貸与)しようとする場合にのみ適用があります。したがって、美術作品や写真の画像ファイル自体をダウンロードによって販売したり、貸与したりする取引には適用されません。
さらに、本条で認められる画像掲載等(複製又は公衆送信)は、あくまで、美術作品又は写真の取引(譲渡・貸与)の「申出の用に供するため」(要するに、販売等の広告のため)に許容されているものです。したがって、ひとたび当該取引が完了した場合に、その後も引き続き画像掲載等を継続することは、もはや「申出の用に供するため」のものとは評価できず、取引終了後に掲載を中止しなければ、複製権又は公衆送信権の侵害問題が生じる余地があります。注意してください。