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著作権法条文解説
法51条は、著作権の「保護期間(存続期間)の原則」について、次のように規定しています:
「1 著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。
2 著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。次条第1項において同じ。)70年を経過するまでの間、存続する。」
著作権の保護期間(存続期間)は、著作物の「創作の時」にはじまり、著作者の生存間プラスその死後70年を経過するまでの間存続するというのが原則です。「著作者の生存間プラスその死後70年」という著作権の保護期間は、現在の国際的な水準であるといえます。
ある著作者が複数の著作物を創作した場合、著作権はその作品の個々の創作ごとに発生し、その著作者の死後70年を経過したときに、当該著作者のすべての著作物にかかる著作権が消滅することになります。一方、共同著作物(2条1項12号)の著作権の保護期間の終期については、「最終に死亡した著作者」の死亡時が70年の起算点となります(かっこ書)。
「著作者の死後70年」という原則的保護期間は、「平成30年12月30日」(TPP11協定の発効日)から施行されることとなっています。そのため、原則として、昭和43年(1968年)以降に亡くなった著作者の著作物の保護期間が延長(50年→70年)されることとなりました。具体的には,昭和43年(1968年)に亡くなった著作者の著作物の原則的保護期間は平成30(2018)年12月31日まででしたが,平成30(2018)年12月30日付けで著作者の死後50年から70年に延長されることになったため,さらに20年著作物が保護されることとなります。
(例) 画家の藤田嗣治さんの著作物は,藤田さんが昭和43(1968)年に亡くなられましたから,昭和44(1969)年1月1日から起算して(57条参照),これまでは, 50年後の平成30(2018)年12月31日まで保護されるとされていましたが,TPP整備法による著作権法の改正により,70年後の2038年12月31日まで保護されることとなっています。
なお、著作権法においては,一度保護期間が満了して公有財産となった著作物については,その保護を後になって復活させる(保護期間を遡って延長する)という措置を採ることはできません。したがって、平成30(2018)年12月30日の前日(平成30(2018)年12月29日)において著作権が消滅していない著作物等についてのみ保護期間が延長されます(TPP整備法附則第7条)。したがって,その時点ですでに保護期間が切れている著作物については,遡って保護期間が延長されることはありません。