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著作権法条文解説

著作権法第65(共有著作権の行使)

「1 共同著作物の著作権その他共有に係る著作権(以下この条において「共有著作権」という。)については、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又は質権の目的とすることができない。
2 共有著作権は、その共有者全員の合意によらなければ、行使することができない。
3 前二項の場合において、各共有者は、正当な理由がない限り、第一項の同意を拒み、又は前項の合意の成立を妨げることができない。
4 前条第三項及び第四項の規定は、共有著作権の行使について準用する。」

本条は、共有著作権の行使に関し、著作権の特質や、共有権利者間の一体性・連帯性を確保する観点から、実態に即した規定とする必要があることから、民法の「特別の定め」(民法264条)を規定したものです。すなわち、著作権が共有に係る場合の法律関係は、著作権法に特別の定めがない限り、民法の準共有に関する規定(民法264条)が適用されることになりますが、本条は、当該規定に言う「特別の定め」に当たります。したがって、本条で規定されていない事項については、共有著作権の性質に反しない範囲で民法の共有に関する規定(民法249条~264条)が適用されることになります。
「共有著作権」とは、「共同著作物の著作権その他共有に係る著作権」をいいます(1項)。そして、著作権の共有とは、数人の者が共同で1つの著作権を保有する状態をいいます。共同著作物(2112号参照)を作成した場合、同一の著作権を数人の者が譲り受けた場合、同一の著作権を数人の相続人が共同相続した場合などにこのような共有関係が発生します。
共有著作権の各共有者は、原則として、当該著作権について各自「持分」を有し、共有著作物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます(民法249条)。「持分の割合」は、共有者間の協議や法律の規定(例えば、民法900条)によって定められますが、それ以外の場合には、各共有者の持分は相等しいものと推定されます(民法250条)。
共有著作権の各共有者は、原則として、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を質権の目的とすることができません(1項)。もっとも、各共有者は、「正当な理由」がない限り、以上の同意を拒むことができないとされています(3項)。一方、相続による持分の移転、持分の放棄、(他の共有者の同意を得て設定された)持分上の質権の実行による移転等の場合には、他の共有者の同意は不要です。なお、ある共有者の持分が放棄されますと、当該持分は他の共有者に帰属することになります(民法255)
共有著作権は、原則として、その共有者全員の合意によらなければ、行使することができません(2項)。単独での行使を認めた場合、他の共有者が不測の不利益を被る場合があろうことを考慮したものです。民法252条においては、共有物の管理に関する事項は「各共有者の持分の価格に従い、その過半数で」決せられることになっていますが、共有著作権の行使の場合には、以上のようないわゆる多数決原理によるのではなく、各共有者の持分の多少に関わらず、全員の合意によるというルールが原則的に適用されることになります。ここで共有著作権の「行使」とは、著作権の内容を積極的に実現すること、すなわち、共有著作権の目的となっている著作物について他人に利用許諾を与えること(631項参照)等を意味し、共有著作権の侵害に対する差止請求権の行使(保存行為)等は含まれないと解されます(117条参照)。もっとも、各共有者は、著作権の円滑な利用を確保する観点から、「正当な理由」がない限り、以上の合意の成立を妨げることはできないとされています(3項)。ここにいう「正当な理由」は、共同著作物の著作者人格権の行使に関して各共同著作者が合意の成立を拒絶しうる場合(642項参照)と比べて、より客観的な合理性が求められると解されます。
共有著作権の行使について「代表して行使する者」をあらかじめ各共有者間で定めることができますが、この代表権に制限が加えられている場合には、対内的には拘束力があっても、その制限を知らない善意の第三者(代表者が一定の行為につき権限を有すると信じて行動した第三者)には対抗することはできません(そのような制限があることを主張することはできません)(4項)。