Kaneda Legal Service {top}

著作権法条文解説

著作権法第66条(質権の目的となつた著作権)

「1 著作権は、これを目的として質権を設定した場合においても、設定行為に別段の定めがない限り、著作権者が行使するものとする。
2 著作権を目的とする質権は、当該著作権の譲渡又は当該著作権に係る著作物の利用につき著作権者が受けるべき金銭その他の物(出版権の設定の対価を含む。)に対しても、行なうことができる。ただし、これらの支払又は引渡し前に、これらを受ける権利を差し押えることを必要とする。」

(参照)著作権法第77条(著作権の登録)第2号

「次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
() 著作権を目的とする質権の設、(以下略)

(参考)著作権法第79条(出版権の設定)第2項

「2 複製権等保有者は、その複製権又は公衆送信権を目的とする質権が設定されているときは、当該質権を有する者の承諾を得た場合に限り、出版権を設定することができるものとする。」

▶本条の意義

本条1項は、質権の目的となっている著作権に係る著作物を効率的に利用する途を確保するため、著作権に質権が設定されている場合であっても、当該著作権は、原則として、著作権者が行使することを規定したものです。一方、本条2項は、質権の実行(質物による債権充当)の有効性を実質的に確保して質権者を保護するため、著作権譲渡の対価や著作物の利用許諾に基づく対価          (ロイヤリティー)、出版権設定の対価等に対しても、質権を行うことができる旨(いわゆる質権の物上代位性)を規定したものです。

著作権を目的とする質権の設定は、当事者間の契約 (質権設定契約)のみによって成立します。もっとも、当該質権の設定を第三者に対抗するためには、著作権登録原簿への「登録」を要します(772)
質権設定契約に別段の定めがなく、当該質権の目的となっている著作権(複製権又は公衆送信権)を著作権者(複製権等保有者)が行使する場合においても、出版権を設定する場合には、当該質権者の承諾が必要になります(792項)。
質権の目的となっている著作権が侵害されている場合には、別段の定めの有無に係わらず、著作権者は、その固有の権能ないし保存行為として、侵害行為に対して差止請求権を行使し、また、損害賠償請求、不当利得返還請求もなし得ると解されます。このように解するときは、「当該著作権に係る著作物の利用につき著作権者が受けるべき金銭」(2項)には、著作権侵害行為によって著作権者が受けるべき損害賠償金及び不当利得金も含まれると解することが妥当といえるでしょう。