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著作権法条文解説

著作権法第88(出版権の登録)

「1 条次に掲げる事項は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。
() 出版権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は複製権若しくは公衆送信権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
() 出版権を目的とする質権の設定、移転、変更若しくは消滅(混同又は出版権若しくは担保する債権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限
2 第78条(第3項を除く。)の規定は、前項の登録について準用する。この場合において、同条第1項、第2項、第4項、第8項及び第9項中「著作権登録原簿」とあるのは、「出版権登録原簿」と読み替えるものとする。」

▶ 出版権の登録**

本条**は、出版権及び出版権を目的とする質権の得喪変更等に関して登録による公示の制度を定め、もって出版権等の取引の安全に資することを目的として規定されたものです。

****平成26年法改正前88条では、出版権及び出版権を目的とする質権の得喪変更等に関し、その登録を第三者対抗要件とする旨規定していました。こうした第三者対抗要件としての出版権登録制度についての考え方に変わりはなく、平成26年法改正により、インターネット送信による電子出版についての出版権の設定等も登録の対象となりなす。

出版権の「設定」は、登録しなければ、第三者に対抗することができません(11号)。出版権は、複製権等保有者と出版者との設定契約(設定行為)によって有効に設定されるのですが(791項)、当事者間の契約に基づいて有効に設定された出版権も、その事実を第三者に有効に「対抗」(主張)するためには、当該設定の事実を文化庁(出版権登録原簿)に登録しておかなければなりません。例えば、複製権等保有者ABCに対し二重に出版権を設定した場合を考えてみましょう。BCとの間の優劣は、出版権設定の登録の有無によって決せられます。かりにCが先に登録したときは、Bは(たとえ設定契約がCより先であっても)、Cに対して自己の出版権を主張することはできず、Bがあえて出版行為又は公衆送信行為をすれば、それはCの出版権を侵害することになります。出版権取引の円滑な遂行のためにも、また、以上のような出版権の二重設定に伴うリスクマネジメントの観点からも、出版権の設定契約をする場合には、是非、文化庁への登録を検討してください。
出版権を侵害した不法行為者などはここにいう「登録しなければ対抗できない第三者」には当たらず、したがって、侵害者(不法行為者)に対しては、出版権の設定や移転の登録がなくても、当該出版権の取得を有効に主張することができるものと解されます。