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著作権法条文解説

著作権法第97(複製権)

「レコード製作者は、そのレコードを複製する権利を専有する。」

本条は、レコード製作者が、そのレコードを複製することに関し、排他独占的権利を有する旨を規定したものです。
「レコード製作者」とは、「レコードに固定されている音を最初に固定した者」のことで(216号)、業界でいう「原盤権」(マスターに関する権利)を有している者のことです。いわゆる市販されているCDのレーベルや販売元(レコード会社)が常に「レコード製作者」ということではありません。「市販されているCD」は、著作権法上は、「商業用レコード」すなわち「市販の目的をもって製作されるレコードの複製物」に当たります(217号)。一般的な用語法とはだいぶイメージが違っていますので注意を要します。ちなみに、著作権法で「レコード」といえば、「蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)」を意味します(215号)。

ローマ条約10**において、レコード製作者は、自己のレコードを「直接又は間接に」複製することを許諾し又は禁止する権利を享受する、とあります。また、WIPO実演及びレコード条約11条は、レコード製作者は、「いかなる態様[方法]又は形式においても(in any manner or form)」、自己のレコードを「直接又は間接に」複製することを許諾する排他的権利を享受する、と規定しています。したがって、本条にいう「複製」には、原盤からリプレスして販売用のCD(商業用レコード)を製作する場合(直接複製)のみならず、市販のCD(商業用レコード)を購入してそこから録音する場合や市販のCD(商業用レコード)がテレビやラジオで放送されて、それを録音するような間接複製も含まれることになります。また、その録音のやり方や方式のいかんを問わないことになっているので、例えば、デジタルによる録音も当然にここに含まれます。

**ローマ条約10
Article 10(Right of Reproduction for Phonogram Producers)
Producers of phonograms shall enjoy the right to authorize or prohibit the direct or indirect reproduction of their phonograms.
レコード製作者は、自己のレコードを直接又は間接に複製することを許諾し又は禁止する権利を享受する。