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『アメリカ著作権制度の解説/著作権に含まれる排他的権利』

はじめに

「著作権」(copyright)とは、著作者が作成した創作的な著作物で、有形的表現媒体に固定されたものに対して、合衆国憲法及び米国著作権法を根拠として与えられる保護形態のことです。
著作権による保護は、オリジナルの作品が創作され、それが有形的表現媒体に固定されたときに自動的にはじまります。
アメリカは、無方式主義(著作権による保護を享受するためには何らの「方式」も要求されないとする考え方)の採用するベルヌ条約(同条約5(2)参照)1989年に加盟しました。そのため、現在では、「著作権表示」(notice of copyright)に関する規定(401条等)は存在しますが、これを著作権保護の要件とすることはできなくなっています。
なお、著作権局に対する著作権主張の登録(copyright registration)は、保護のための条件とはなりません(408(a)後文)

現行法である1976年法以前の1909年法の下では、連法制定法による著作権による保護は、「発行」(publication)された著作物に対して与えられていました**が、現在では、著作物が「発行」されているか否かにかかわらず、連邦法(連邦著作権法)によって一元的に保護される仕組みになっています。

**「未発行」の著作物についてはコモン・ロー上の権利として各州法によって保護されていまいた。

著作権を保有する者は、「著作権者」であり、「著作権者」(copyright owner, owner of copyright)とは、「著作権に含まれる排他独占的権利(exclusive rights)のいずれかに関して、当該権利を有する者」をいいます(101)。そして、かかる著作権者は、フェア・ユース(fair use)等、その排他独占的権利が制限される一定の場合(107条~122)を除いて、次に掲げる行為について、自ら当該行為を行うか、又は当該行為を他人に行わせる(他人に許諾する)排他独占的権利を有する旨が規定されています(106)
具体的には、以下の①~⑥の権利(支分権)です。以下、順に解説していきます。
① 複製権
② 派生的著作物の創作翻案権
③ 頒布権
④ 公の実演権
⑤ 公の展示権
⑥ デジタル音声送信による公の実演権

(参照)
米国著作権法106(著作権に含まれる排他的権利)
107条ないし第122条を条件として、著作権者は、本編の下で、次に掲げる行為を行い又はその行為を許諾する排他独占的権利を有する。
(1) コピー又はレコードに著作権のある著作物を複製すること、
(2) 著作権のある著作物に基づいて派生的著作物を作成すること、
(3) 著作権のある著作物のコピー又はレコードを、販売その他の所有権の移転又は貸与によって、公衆に頒布すること、
(4) 言語の著作物、音楽の著作物、演劇の著作物、無言劇・舞踊の著作物、映画その他の視聴覚著作物の場合には、著作権のある著作物を公に実演すること、
(5) 言語の著作物、音楽の著作物、演劇の著作物、無言劇・舞踊の著作物、絵画、図形又は彫刻の著作物(映画その他の視聴覚著作物の個々の映像を含む。)の場合には、著作権のある著作物を公に展示すること、また、
(6) 録音物の場合には、デジタル音声送信の手段を用いて、著作権のある著作物を公に実演すること。

106. Exclusive rights in copyrighted works
Subject to sections 107 through 122, the owner of copyright under this title has the exclusive rights to do and to authorize any of the following:
(1) to reproduce the copyrighted work in copies or phonorecords;
(2) to prepare derivative works based upon the copyrighted work;
(3) to distribute copies or phonorecords of the copyrighted work to the public by sale or other transfer of ownership, or by rental, lease, or lending;
(4) in the case of literary, musical, dramatic, and choreographic works, pantomimes, and motion pictures and other audiovisual works, to perform the copyrighted work publicly;
(5) in the case of literary, musical, dramatic, and choreographic works, pantomimes, and pictorial, graphic, or sculptural works, including the individual images of a motion picture or other audiovisual work, to display the copyrighted work publicly; and
(6) in the case of sound recordings, to perform the copyrighted work publicly by means of a digital audio transmission.

著作権に含まれる支分権

① 複製権

著作権のある著作物をコピー又はレコードに「複製する」(to reproduce)ことに係わる排他独占的権利です。

複製権は、著作権に含まれる排他独占的権利の中で最も基本的なものであり(わが国の著作権法でも同様)、著作権による保護として当然に予定されている権利といえます。そのためか、米国著作権法の定義規定(101)の中に「複製」を定義付けている規定がありません。もっとも、「コピー」及び「レコード」に関する定義規定があり、「複製」は、この「コピー」又は「レコード」になされることが予定されています。ここで、「コピー」とは、簡単に言うと、「著作物が固定されている有体物(レコードを除く。)(material objects, other than phonorecords, in which a work is fixed)であり、「レコード」とは、「音声(映画その他の視聴覚著作物に伴う音声を除く。)が固定されている有体物」(material objects in which sounds, other than those accompanying a motion picture or other audiovisual work, are fixed)のことです。
以上の各規定から、米国著作権法上、「複製」とは、著作物を「有体物に固定する」こと(つまり、有体物である「コピー」又は「レコード」を作成すること)に係わるものであるという点は読み取れます。これは、米国著作権法の下では、著作権の保護客体である「著作者の作成に係る創作的な著作物」(original work of authorship)は、「有形的表現媒体に固定された」(fixed in any tangible medium of expression)ものでなければならないという「固定性」の要件を規定しているため(102(a)参照)、「複製」の概念も、必然的に、「有体物への固定」と結び付けて考えられるものでなければならないという理屈になるのでしょう。したがって、詩(言語著作物)を忠実に生で(ライブで)朗読する行為は、「有体物への固定」と何ら結び付いていないため、「複製権」の射程範囲には入りません(もっとも、当該行為は、それが「公に」なされる場合には、後述の「公の実演権」の射程範囲に入ります。)。
なお、わが国においても、「複製」とは、「有形的に再製すること」を意味し(著作権法2115号参照)、無形的な再製(生の演奏や上演、朗読等)は「複製」の概念から外されています。

② 派生的著作物の創作翻案権

著作権のある著作物に基づいて「派生的著作物を作成する」(to prepare derivative works)ことに係わる排他独占的権利です。

「派生的著作物」とは、「1以上の既存の著作物を基礎とする著作物」で、翻訳や編曲、ドラマ化(脚色)、小説化、映画化、録音、美術複製、簡約化(短縮)、要約のような形式のもの(改作物・変形物・翻案物)をいいます(101条。わが国の「二次的著作物」に相当)。また、全体としての創作性が認められる限り、既存の著作物の改訂版や注釈(注解)、詳説(詳解)といった形式の変更物も「派生的著作物」とされます。
著作権者は、以上のような派生的著作物を自ら作成すること又はその作成を他人に許諾することに関して排他独占的な権利を専有することになります。

③ 頒布権

著作権のある著作物のコピー又はレコードを、販売その他の所有権の移転又は貸与によって、「公衆に頒布する」(to distribute to the public)ことに係わる排他独占的権利です。

米国著作権法上「頒布」に関する定義規定はありませんが、「発行」(publication)に関して次のような定義規定が置かれています(101)
“発行”とは、販売その他の所有権の移転又は貸与によって、公衆に著作物のコピー又はレコードを頒布することをいう。……
(原文) Publication” is the distribution of copies or phonorecords of a work to the public by sale or other transfer of ownership, or by rental, lease, or lending. ……
したがって、「頒布」は、米国著作権法上、基本的には「発行」と同義になる場合が多いと思われます。「頒布」があるというためには、有体物(コピー又はレコード)の移転(所有権又は占有権の移転)があることが必要とされます。

米国著作権法における「頒布権」は、上述のように、「譲渡権」及び「貸与権」を含む概念で、しかも、すべての著作物に認められている権利です。これに対し、わが国の著作権法においては、映画の著作物についてのみ「頒布権」(譲渡権と貸与権の両方を含む。著作権法26条、2119)を、映画の著作物以外の著作物について「譲渡権」(26条の2)及び「貸与権」(26条の3)を認めています。用語法が日本とは異なりますので、注意が必要です。

インターネットを介して著作物を配信する場合、その配信によって著作物が実際に「実演」されれば、次に解説します「公の実演権」の射程範囲に入ります。ところが、送信元のサーバーに著作物を入録等して「実演され得る状態」にあるがいまだ実演されていない場合に、このような状態(わが国で言うと「送信可能化」の状態)を規制するのは、米国著作権法においては、この「頒布権」であると解する余地があります。すなわち、「頒布権」は有体物(コピー)の移転があることが前提となりますが、インターネットを介して著作物が配信される場合、通常、ダウンロードによってその著作物が受信先の端末の記録媒体(それがRAMへの一時的固定の場合には異論もありますが)に固定されるため、当該固定をもってコピー(有体物)が作成されたと評価し(「頒布」されたと評価し)、併せて、その前段階である「著作物を配信(ダウンロード)可能な状態」に置く行為も規制対象と捉えて、これらを「頒布権」の射程範囲に含めて法理論を構成しようという理屈です。

④ 公の実演権

言語著作物、音楽著作物、演劇著作物及び舞踊著作物、パントマイム(無言劇著作物)、並びに映画その他の視聴覚著作物について、著作権のある著作物を「公に実演する」(to perform publicly)ことに係わる排他独占的権利です。

ここで、著作物を「実演する」とは、「直接に又は何らかの装置若しくはプロセスを用いて、著作物を朗読し、表現し、演奏し、舞い又は演じる(上演する)」ことをいい、映画その他の視聴覚著作物の場合には、「映像を連続して(in any sequence)見せる」こと、又は「映像に伴う音声を聞かせる」ことをいいます(101)
このように、米国著作権法では、「実演」は、著作物を「展示」以外の方法で公衆に伝達する行為を広く包含する概念として把握されます。わが国の「上演権」「演奏権」「上映権」「口述権」をカバーし、「送信」(放送等)に関しては、録音物を除いて**、アナログ形式であるかデジタル形式であるかを問わず、これをカバーしています。

** アメリカでは「録音物」を「著作物」の1類型として捉えていますが(102(a)(7))、この「録音物」に関しては、「公の実演権」は認められていません。したがって、例えば、音楽の「録音物」がクラブで演奏(再生)されたり、ラジオ放送で流される場合、当該音楽(その録音物に収録されている音楽作品)の「作詞家」や「作曲家」(ともに音楽作品の著作者)には、そのような利用に対して「公の実演権」が認められるため、ロイヤリティーを請求することも可能です。ところが、当該録音物に収録されている音楽を演奏した者及びその音を収録した者(ともに録音物の著作者)には、「公の実演権」が認められていないため、クラブやラジオ放送での演奏(再生)に対する許諾権は(したがって、ロイヤリティーの請求権も)ありません。もっとも、後述のように、「録音物」については「デジタル音声送信」に限って、その「公の実演権」は認められています。

▶「公に」(publicly)の意義

公の実演権と、次に解説します公の展示権に関して著作権が及ぶのは、「公に」(publicly)になされる場合に限られます。この点、法は、「公に」実演・展示することを、次のように定義しています(101)
① 「公衆に開かれた場所、又は家族若しくはその知人のノーマルな[通常の]集まりの範囲を超えた相当多数の者が集まる場所」において著作物を実演・展示すること。
② 何らかの装置若しくはプロセスを用いて、上記①のような場所又は公衆に、著作物の実演・展示を「送信その他の方法で伝達する」こと(当該実演又は展示を受信することができる公衆の構成員が、これを、同一の場所で受信するか、別個の場所で受信するか、また、同時に受信するか、異時に受信するかは問わない。)。

上記の②に関しては、無線放送(テレビ放送・ラジオ放送)、有線放送(ケーブルテレビ)、インタラクティブ送信等を通じた実演・展示を想定しています。なお、実演又は展示を「送信する」とは、映像又は音声が発信される場所から離れたところでこれらを受信する装置又はプロセスによって、実演又は展示を伝達することをいいます(101)
例を挙げて説明しましょう。例えば、レンタルビデオ店で映画のDVDをレンタルして、自宅の自分の部屋で、そのDVDを鑑賞する場合、その行為(鑑賞=装置を使ったDVDの再生)は映画著作物の「実演」に当たりますが、「自宅の自分の部屋で」の行為であることから、上記に規定する場所での実演には当たりません。また、「送信その他の伝達」が行われたわけでもありませんので、上記にも該当しません。したがって、当該鑑賞行為(実演)は「公に」行われたものとは評価されません。
一方、レンタルビデオ店でレンタルしたDVDを、その店内に設置されているいくつかある「個別ブース」に1人で入って、そのDVDを鑑賞する場合はどうでしょうか。似たようなケースが実際に裁判で問題となったことがあるのですが、このような「個別ブース」がレンタルビデオ店を訪れる不特定の者によって利用されることからすると、当該個別ブースは「公衆に開かれた場所」(上記①)に該当し、そこでのDVDの鑑賞は、「公の実演権」の射程範囲内に入るものと解されるのではないでしょうか。

⑤ 公の展示権

言語著作物、音楽著作物、演劇著作物及び舞踊著作物、パントマイム(無言劇著作物)、並びに絵画、図形又は彫刻の著作物(映画その他の視聴覚著作物の個々の映像を含む。)について、著作権のある著作物を「公に展示する」(to display publicly)ことに係わる排他独占的権利です。

「公に」の解釈については、上述した「公の実演権」の場合と同様です。
著作物を「展示する」とは、「直接に又はフィルム、スライド、テレビ映像その他の装置若しくはプロセスを用いて、著作物のコピーを見せる」ことをいい、映画その他の視聴覚著作物の場合には、「個々の映像を非連続的に(nonsequentially)見せる」ことも「展示する」ことに該当するとしています(101)

⑥ デジタル音声送信による公の実演権

録音物について、著作権のある著作物を「デジタル音声送信により公に実演する」(to perform publicly by means of a digital audio transmission)ことに係わる排他独占的権利です。

録音物は「音声」(sounds)の固定から生じる著作物であるため、音声に係わる(audio)デジタル送信が、ここでの射程範囲になります。なお、「デジタル送信」とは、「デジタルその他の非アナログ形式による、全体的又は部分的な送信」をいいます(101)
AK