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『アメリカ著作権制度の解説/著作権の帰属』
▶ 著作権の原始的帰属(initial ownership)
米国著作権法においても、著作権は、著作者が著作物を創作した時点で、それと同時に自動的に発生します。いかなる「方式」(formality)の履行も必要とされません。著作権の発生及び保護に関するこのような考え方を「無方式主義」と呼んでいますが、国際的に了解された考え方です(ベルヌ条約5条(2)、著作権法17条2項参照)。もっとも、アメリカでは、「著作物を創作した時点」が著作物を「(有体物に)固定」した時点になる点で、必ずしも「固定性」を著作物性とは考えないわが国(「生放送のテレビ番組」や「楽譜のない即興演奏の音楽」にも著作権が発生する。)とは、差異を生じることになります。
なお、米国著作権法には、著作権局への「著作権登録」(copyright registration; 408条等)や著作物への「著作権表示」(notice of copyright; 401条等)といった制度があり、これらを履践しておくと著作権の保護の面で法律上いくつか重要な効果が得られますが、かかる登録や表示をしなかったからといって著作権の発生すなわち著作権の原始的帰属自体が否定されるわけではありません。
著作権は、著作物の著作者に原始的に帰属する―これが大原則です(201条(a)前段**)。「共同著作物**」(a
joint work)に関しては、その各著作者が当該共同著作物にかかる著作権の「共有者」(co-owners)となります(同後段**)。
なお、「共同著作物」の意義については、定義規定(101条)があり、それによると、「共同著作物」とは、「2以上の著作者によって作成される著作物であって、その各人の寄与物が単一物全体の中で分離できないか又は相互に依存する部分に統合されるという(当該著作者の)意図[意思]をもって作成されるものをいう**」とされています。
**201.
Ownership of copyright
(a)
Initial Ownership.—Copyright in a work protected under this title vests
initially in the author or authors of the work. The authors of a joint work are
coowners of copyright in the work.
《対訳》
(a)
原始的帰属―本編に基づいて保護される著作物に対する著作権は、当該著作物の著作者に原始的に帰属する。共同著作物の著作者は、当該著作物に対する著作権の共有者である。
**「共同著作物」の定義(101条定義・原文):A “joint work” is a work
prepared by two or more authors with the intention that their contributions be
merged into inseparable or interdependent parts of a unitary whole.
▶ 「集合著作物」と「集合著作物への寄与物」の場合
「集合著作物」とは、定期刊行物、アンソロジー[選集・作品集]、又は百科事典などのように、それ自身が別個独立の著作物となる多数の寄与物が1つの集合体に編成されている著作物をいいます(101条定義)。
「集合著作物への寄与物**」、すなわち、集合著作物を構成する個々の寄与物については、その著作権は、当該集合著作物(全体)に対する著作権とは当然に別個のものであるため、そのような寄与物の著作権は、その寄与物を創作した個々の著作者に原始的に帰属することになります(201条(c)前段**)。そして、当該集合著作物の著作権者は、寄与物に係る著作権の明示的な移転がない場合には、その集合著作物、その改訂版及びその同一のシリーズにおける以後の集合著作物の一部として、当該寄与物を複製し又は頒布する特別の権利だけを取得したものと推定されます(同条(c)後段**)。
**アメリカ著作権局の公表資料によれば、「もしあなたが、雑誌や新聞などの定期刊行物に掲載されて発行されている記事やコラム、短編小説を書いていれば、あなたは、自身の作品に対する(集合著作物である当該定期刊行物とは)別個の登録をすることができる。この種の作品[著作物]は、『集合著作物への寄与物』と呼ばれている。」(If you have written an article, column, or short story that has
been published in a magazine, newspaper, or other periodical, you may make a
separate registration for your work. This kind of work is called a
“contribution to a collective work.”)と、説明されています。
**201条(c) Contributions to
Collective Works.—Copyright in each separate contribution to a collective work
is distinct from copyright in the collective work as a whole, and vests
initially in the author of the contribution. In the absence of an express
transfer of the copyright or of any rights under it, the owner of copyright in
the collective work is presumed to have acquired only the privilege of
reproducing and distributing the contribution as part of that particular
collective work, any revision of that collective work, and any later collective
work in the same series.
《対訳》
(c)
集合著作物への寄与物―集合著作物を構成するそれぞれ別個の寄与物に対する著作権は、当該集合著作物全体に対する著作権とは別個のものであり、当該寄与物の著作者に原始的に帰属する。著作権又は著作権に基づく諸権利の明示的な移転がない場合には、集合著作物の著作権者は、その特定の集合著作物、その改訂版及びその同一の叢書[シリーズ]における以後の集合著作物の一部として、当該寄与物を複製し及び頒布する特別の権利のみを取得したものと推定する。
▶ 原始的帰属の例外~職務著作物の取扱い~
著作権は、上述したように、著作物を創作した者、すなわち著作者に原始的に帰属するのが原則ですが、「職務著作物」(101条の定義参照)に関しては、「使用者(雇用主)その他当該著作物が作成される者」(多くの場合、従業員を雇用する会社)が「著作者」とみなされ、当事者がその署名した書面で別段の明示的な合意をしていない場合には、この使用者(主に会社)が、著作権に含まれるすべての権利を保有するという重大な例外があります(201条(b)**)。わが国の著作権法15条に相当する規定です。
**201条(b) Works Made for Hire.—In
the case of a work made for hire, the employer or other person for whom the
work was prepared is considered the author for purposes of this title, and,
unless the parties have expressly agreed otherwise in a written instrument
signed by them, owns all of the rights comprised in the copyright.
《対訳》
(b)
職務著作物―職務著作物の場合、使用者[雇用主]その他当該著作物が作成される者は、本編において著作者とみなされ、また、当事者がその署名した書面で別段の明示的な合意をしていない場合に限り、当該著作権に含まれるすべての権利を有する。
なお、アメリカ著作権局の公表資料は、次のように解説しています:
「1976年改正著作権法(現行法)のもとでは、著作物は、固定された形式で創作された時から著作権によって保護を受けることになる。換言すると、ある作品が有形的な表現形式に記述その他の方法で固定されると、著作権は、ただちに、当該作品を創作した著作者の財産となる。著作者又はその者から権利を譲り受けた者だけが、合法的に、著作権を主張できるのである。
ある作品を創作する者が当該作品(著作物)の著作者であるというのが一般原則であるが、この原則には1つの例外がある:著作権法は、「職務著作物」と呼ばれるカテゴリーを定義しており、もし、ある作品が「職務上創作される」と、(その作品を実際に創作した)従業員ではなく、その者の雇用主が著作者とみなされるのである。この雇用主は、会社であるかもしれないし、団体や(他人を雇用する)個人である場合もありうる。」
(原文) Under the 1976
Copyright Act as amended, a work is protected by copyright from the time it is
created in a fixed form. In other words, when a work is written down or
otherwise set into tangible form, the copyright immediately becomes the
property of the author who created the work. Only the author or those deriving
their rights from the author can rightfully claim copyright.
Although
the general rule is that the person who creates a work is the author of that
work, there is an exception to that principle: the copyright law defines a
category of works called “works made for hire.” If a work is “made for hire,”
the employer, and not the employee, is considered the author. The employer may
be a firm, an organization, or an individual.
AK