Kaneda Legal Service {top}

役立つ記事

『契約書例(文化庁が公開しているひな形)④』

~「演奏会・上演会などにおける実演」の契約書式~

[対象]
▶「演奏会やコンサート、上演会などの催し物(以下「イベント」という)の主催者が、出演者に対して、⾳楽の演奏や演劇、舞踊、オペラ、バレエの上演等(以下「実演」という)を依頼する場合に、主催者と出演者の間で結ぶ契約書」が対象です。ただし、ここで対象となる演奏会・上演会等は、原則として営利を⽬的としないものです。商業ベースのもの、エージェントが仲介するもの、⼤規模・継続的なイベント等には馴染みません。
▶⾮営利の団体であっても、コンサートや演劇の上演を⾏うことを主な⽬的とした団体が⾏うコンサート等は対象としていません。また、演奏や上演を⾏う⼈・団体がプロの場合も対象としていません。これらの場合は、報酬や利⽤の条件等についてより細かい規定が必要となる場合が多いと思われますので、実際の契約にあたっては当事者間で⼗分な協議をした⽅がよいでしょう。
▶出演者がその場で「⽣」で演奏や上演を⾏う場合を対象としており、映画の上映や、過去の演奏・上演の様⼦を収録した映像を上映する場合は対象外です。

[契約書例(文化庁が公開しているひな形)]

▶収⼊印紙の貼付が必要な場合にはこの場所に貼付してください。

       契 約 書

__________(以下「甲」という。)と_________(以下「⼄」という。)とは_______への甲の出演とその実演の利⽤に関し、以下のとおり契約を締結する。

第1条 (出演の依頼)
⼄は、甲に対し、⼄が主催する以下のイベントに出演することを依頼し、甲はこれを承諾した。
(1)⽇時︓_____________ ________分 〜 ________
(2)場所︓__________
(3)イベントの名称︓__________
(4)出演の内容︓__________

第2条 (実演の利⽤許諾)
甲は、⼄が、甲の実演の様⼦を写真に撮影することを許諾する。

▶リアルタイムでの利⽤と録⾳・録画物の利⽤をまとめて規定する場合
()
第○条(実演の利⽤許諾)
1 甲は、⼄⼜は⼄が指定する者が甲の実演に関して次に掲げることを⾏うことを許諾する。
(1)甲の実演を録⾳及び録画すること
(2)甲の実演の様⼦を写真に撮影すること
2 甲は、⼄⼜は⼄が指定する者が甲の実演をリアルタイムで(実演と同時に)次に掲げる⽅法により利⽤することを許諾する。
(1)市役所正⾯ホールで上映等すること
(2)インターネット(○○市ウェブサイト)を通じて配信すること
(3)△△ケーブルテレビジョンを通じて放送・有線放送すること
3 甲は、⼄⼜は⼄が指定する者が第1項に基づき録⾳及び録画したもの(以下「録⾳・録画物」という)を次に掲げる⽅法により利⽤することを許諾する。
(1)インターネット上のウェブサイトへアップロードすること(報酬は第○条の報酬に含む。)
 サイト名○○市ウェブサイト
 掲載期間○○年○⽉○⽇ から ○○⽉○⽇まで
(2)甲及び⼄の関係者へ有償⼜は無償で配布すること
(3)⼀般へ配布・販売すること(報酬は別途⽀払う。)
(4)放送・有線放送すること(報酬は第○条の報酬に含む。)
 放送・有線放送局名△△ケーブルテレビジョン
4 甲は、⼄⼜は⼄が指定する者が第 1 項に基づき撮影した写真を次に掲げる⽅法により利⽤することを許諾する。
(1)印刷物へ掲載すること
(2)インターネット上のウェブサイトへ掲載すること
 ウェブサイト名○○市ウェブサイト
 掲載期間○○年○⽉○⽇ から ○○⽉○⽇まで
5 ⼄は、前項の利⽤にあたっては必要な範囲で編集して利⽤することができる。ただし編集にあたっては、甲の名誉・声望を傷つけないように配慮する。また、⼄は、甲の実演の利⽤に際し、公正な慣⾏にしたがって甲の⽒名を表⽰する。
6 甲⼜は⼄がこれら以外の利⽤をしようとする場合は、甲と⼄とで協議して、利⽤の可否、態様、報酬の額等を決めるものとする。

▶「実演家」には実演家⼈格権があります。⽒名表⽰ができない、あるいは利⽤にあたって編集・改変・削除等が予想される場合、あらかじめそのことの了解を得ておくとトラブル防⽌に役⽴ちます。

第3条 (報酬の⽀払い)
⼄は、甲に対し、第1条に定める出演の報酬及び第2条に定める実演の利⽤許諾の対価として⾦__________円(消費税込み)を_____________⽇までに⽀払う。

▶報酬・対価に係る消費税や所得税(源泉徴収)については、⽀払いの相⼿⽅や報酬・対価の額などによって取り扱いが異なりますので、必要に応じ税の専⾨家に相談してください。
▶振込の場合は、振込⼿数料を誰が負担するかについても明記するようにしましょう。

第4条 (実演する著作物の著作権処理)
甲の実演において第三者が著作権を有する著作物等を利⽤する場合は、⼄が⼄の責任でその利⽤許諾を得て使⽤料を⽀払う等の必要な権利処理を⾏う。
そのために、甲は、実演するすべての作品について正確な作品名、作家等著作権者の名称、その他必要な情報を事前に⼄に提供しなければならない。

▶⼤変重要な規定です。
『主催者が著作権者から了解を得ることとした場合、出演者から、演⽬の中で利⽤されたものの著作権者について正確に把握する必要があります。事前に、必ず出演者から上演⼜は演奏の内容を聞いて、どこに連絡をして了解を得ればよいか、使⽤料はいくらになるか等を確認しなければなりません。
脚本等でオリジナル著作物を上演する場合でも、その中に⾳楽、⼩説や詩の⼀説、写真など他⼈の著作物が使われていると、その著作物の利⽤の了解を得る必要のある場合がありますので、⼗分注意しなければなりません。
「アンコール」など、プログラムに記載されない演奏についても同様に著作権者の了解が必要です。
会場での演奏・上演のほか、リアルタイムでの利⽤が予定されている場合や録⾳・録画して後⽇利⽤することを予定している場合は、そのそれぞれの利⽤についても著作権者の了解が必要です。なお、主催者以外が録⾳・録画物を利⽤する場合(ウェブ公開や放送は主催者以外が⾏うことも多い)、実際に誰が了解を得て使⽤料を⽀払うのか、主催者は実際に利⽤する⼈ときちんと取り決める必要があります。もし著作者の了解を得られなかった場合、通常は主催者が責任を負うことになります。』

▶出演者が著作権者の許諾を得る場合
()
第○条(実演する著作物の著作権処理)
第○条の実演を⾏うにあたって、実演する著作物⼜は著作物に含まれる著作物等について著作権者等の許諾が必要な場合には、著作権者等の許諾を得ること、及び対価を⽀払うこと等、必要な契約はすべて甲の責任で⾏う。
※ただし、出演者が了解を得るとした場合でも、万⼀でも著作者の了解を得られなかったときには、著作権者との関係では主催者が責任を負う場合がありますので、⼗分注意してください。

▶主催者以外の⼈が利⽤する場合
()
第○条(実演する著作物の著作権処理)
第○条の実演を⾏うにあたって、実演する著作物⼜は著作物に含まれる著作物等について著作権者等の許諾が必要な場合は、⼄が⼄の責任で権利処理を⾏うものとする。ただし、⼄が第三者に当該利⽤をさせる場合、⼄は⼄の責任で当該第三者に著作権者等の了解を得させることができる。

▶「営利を⽬的としない上演等」について
公表された著作物は、「営利を⽬的とせず、かつ、聴衆⼜は観衆から料⾦を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、⼜は⼝述することができる」と定められています(著作権法38条第1)。ただし、当該上演、演奏、上映⼜は⼝述について実演家⼜は⼝述を⾏う者に対して報酬が⽀払われる場合は、この限りでありません。
したがって、たとえ⼊場料無料のイベントでも、企業の宣伝⽬的のイベントや出演者に報酬が⽀払われるイベントは、著作権者の了解が必要となります。また、演奏等をリアルタイムでインターネット配信や放送を⾏う場合も、法 38 1 項には該当しませんので、著作権者の了解が必要です。

第5条
甲は、⼄が、イベントで実演する甲を撮影した写真を、次のように利⽤するか、または第三者に利⽤させることを許諾します。
(1)印刷物への掲載(報酬は第3条の報酬に含む。)

第6条 (⽒名表⽰)
⼄は、甲の実演の利⽤に際し、公正な慣⾏に従って甲の⽒名を表⽰しなければならない。

第7条 (その他)
本契約に定めのない事態が⽣じた場合は、甲と⼄とで誠意をもって協議の上、解決にあたる。

▶その他、契約書には、契約期間に関する条項、中途解約に関する条項、契約変更に関する条項、契約解除に関する条項、秘密保持に関する条項、権利義務の譲渡等禁⽌条項、合意管轄に関する条項等を置くことがあります。

本契約締結の証として、本契約書2通を作成し、甲⼄記名捺印の上、各⾃1通を保持する。

 年 ⽉ ⽇
甲 住所
⽒名           印
⼄ 住所
⽒名           印