契 約 書
  __________(以下「甲」という。)と__________(以下「⼄」という。)とは、写真撮影業務の委託に関し、以下のとおり契約を締結する。
  第1条 (委託)
  ⼄は、甲に対し、以下の写真(以下「本著作物」という。)の撮影を委託し、甲はこれを受託した。
  (1)テーマ︓__________
  (2)形式︓__________
  (3)枚数︓__________
  
  ▶著作物の創作を依頼するなど他⼈に⼀定の仕事を依頼する契約では、依頼する仕事の内容(撮影する写真のテーマ・対象、納品する写真のサイズ、カラー・モノクロの別、分量等)を特定することが重要です。
  
  第2条 (納⼊)
  1 甲は⼄に対し、本著作物を以下の形式により、____年____⽉____⽇までに、⼄に対して納⼊する。
   ・__________
  2 ⼄は、前項の納⼊を受けた後速やかに納⼊物を検査し、納⼊物に契約不適合がある場合や、⼄の企画意図に合致しない場合は、その旨甲に通知し、当該通知を受けた甲は、速やかに⼄の指⽰に従った対応をする。
  3 ⼄は、納⼊物を、利⽤が終わり次第速やかに甲に返却する。
  
  ▶この契約は、依頼を受けた者は依頼者に対して仕事を完成(著作物の創作)することを約束し、依頼者は成果物(著作物)を完成させたことに対して報酬を⽀払うことを約束する契約です。したがって、成果物をいつまでに完成し、完成した成果物をどのような⽅法で依頼者に納⼊するかについて定めておくことが必要です。納期は年⽉⽇で明⽰する⽅法や、⼀定の期間を定めて⽰す⽅法(例えば、「契約締結後3か⽉以内」と規定する場合)が考えられます。
  成果物の納⼊⽅法も具体的に定めておいた⽅がよいでしょう。例えば、電⼦メールでのデータ送信・ファイル転送、データCD等の持参・郵送、あるいはフィルム等の持参・郵送等です。
  
  ① 検査条項
  「著作物の創作」のように、ある仕事を完成させることを契約の⽬的とする契約においては、納⼊された成果物によって「仕事の完成」があったと評価してよいかどうかについて依頼者側が検査する必要があります(例えば、パンフレットに掲載する写真の撮影を依頼した契約で、全く関係のないシーンばかりを撮影しても、仕事を完成したことにはなりません。)。そこで、この納品検査の⽅法等について契約で定めておくことが必要です。
  ② 納⼊物の所有権
  写真撮影を依頼する契約において、電⼦データ形式で納⼊する場合は、成果物の所有権が問題になることはありません。ただし、成果物の記録媒体(フィルム等)によっては、媒体それ⾃体が財産的な価値を持つことがあるため注意が必要です。所有権は、そのまま⾃然に依頼者に移転する、ということにはならないため、契約で決めておかないと、後⽇、成果物の所有権を巡って争いが⽣じる危険があります。依頼者において成果物の所有権を取得したい場合や、著作者において成果物の所有権を保有しておく必要がある場合は、特に成果物の所有権の帰属を契約書に明確に定めておく必要があるでしょう。
  ③ 遵守事項
  成果物の完成までに⻑期間を要するような場合には、仕事の進捗状況を管理するための条項や、依頼者の指⽰に関する条項を設けることがあります。
  (例)
  第○条(遵守事項)
  1 甲は、⼄の企画意図を理解、尊重し、適宜⼄の指⽰に従うものとし、⼄は、甲に対し、適宜企画意図に合致させるために本著作物の修正を求めることができる。ただし、甲の本契約に基づく業務を不当に遅延させてはならない。
  2 甲は、⼄から要求があったときは、⼄に対し、適宜、本著作物に関する業務の進捗状況その他制作に関する事項を報告しなければならない。
  
  第3条 (権利の帰属)
  本著作物の著作権は甲に帰属する。
  
  ▶著作権法では、現実に著作物を創作した⼈(撮影者)が著作者となり、その著作者が著作権を持つものと定められています。依頼者が報酬を⽀払ったからといって、それだけで著作権を取得することにはなりません。依頼者が著作物を利⽤するためには、著作権者からその利⽤について了解を得るか、⼜はその利⽤に関する著作権を譲り受ける必要があり、これらについて契約書で定めることが必要です。著作権を誰が持つかを巡って後に争いが⽣じないよう、契約書で著作権の所在を確認しておくことが重要です。
  《 依頼者に著作権を譲渡する場合》
  著作権は、⾃由に譲渡することができるため、契約で、依頼者がその著作物の著作権を著作者より譲り受けることもできます。著作権の譲渡を受けると、依頼者としては、その著作物を⾃由に利⽤できるだけでなく、その著作物を他⼈が利⽤することも制限できるようになるというメリットがあります。しかし、逆に著作者にとっては、著作権を譲渡してしまうと、その後は、譲渡先の了解を得ない限り、著作者⾃⾝が様々な活動をする際に必要となっても(例えば、その著作物をインターネットで公開するような場合でも)その著作物を利⽤することができなくなりますし、類似の著作物を作ることが制約されてしまう(譲渡した著作権を侵害する可能性がある)というデメリットも⽣じます。著作権を譲渡する契約を結ぶ場合には、このような著作者のデメリットに配慮して、これを調整する規定(例えば、著作者⾃⾝の利⽤を認める規定や、著作者が類似の著作物を創作することを認める規定等)を置くことも⼀つの⽅法として考えられます。その他、著作権を譲渡するに際しては、譲渡する場合の対価の妥当性も含め、当事者間で⼗分に検討する必要があります。
  (以下の規定例〔著作権の移転〕の場合は契約書例の第3条と差し替えることになり、契約書例第4条は不要となります。)
  (例)
  第○条(著作権の移転)
  本著作物の著作権(著作権法第 27 条及び第 28 条に規定する権利を含む)は、第○条の対価の⽀払いにより、⼄に移転する。
  (例:著作者による利⽤を認める場合)
  第○条(著作権の移転)
  1 本著作物の著作権(著作権法第 27 条及び第 28 条に規定する権利を含む)は、第○条の対価の⽀払いにより、⼄に移転する。
  2 前項の規定にかかわらず、⼄は、甲に対し、甲が本著作物を利⽤することを認める。
  (例:著作者による利⽤⽅法を指定して認める場合)
  第○条(著作権の移転)
  1 本著作物の著作権(著作権法第 27 条及び第 28 条に規定する権利を含む)は、第○条の対価の⽀払いにより、⼄に移転する。
  2 前項の規定にかかわらず、⼄は、甲に対し、甲が本著作物を以下の⽅法で利⽤することを認める。
  ① 甲が⾃⾝の制作活動を実施する際に必要となる場合
  ② 甲が営利を⽬的とせずに本著作物を利⽤する場合
  ③ その他⼄が特に認めた場合
  
  ▶注意点
  著作権を譲渡する契約において、⼆次的著作物を創作する権利(著作権法第27条)及び⼆次的著作物を利⽤する権利(著作権法第28条)を譲渡の対象として明記しないときは、これらの権利は譲渡の対象としなかったという推定を受けます。
  複製権、譲渡権など個別の権利単位で著作権を譲渡することも可能です。その場合、依頼者側は、譲り受ける権利の範囲によって著作物の利⽤⽬的を達成できるかどうかを慎重に検討する必要があります。他⽅、著作者側はこれらの権利が譲渡の対象となると、その後、類似の著作物(⼆次的著作物)が創作できなくなってしまうので、作品の性質に応じて、譲渡するのかどうかを慎重に検討する必要があります。
  
  
  第4条 (利⽤許諾)
  甲は⼄に対し、本著作物を下記形態で利⽤することを許諾する。
  (1)印刷物への利⽤
   名称︓広報○○○○、部数︓__________部
   名称︓__________、部数︓__________部
   名称︓__________、部数︓__________部
  (2)ウェブサイトにおける掲載
   サイト名︓○○社公式サイト
  掲載期間︓_____年____⽉____⽇から_____年____⽉____⽇まで
  (3)その他
  その他︓___________
  
  ▶著作権が著作者に帰属する場合、依頼者がその著作物を利⽤するためには、著作権者である著作者から、著作物の利⽤に関する了解を得なくてはなりません。利⽤する態様は、なるべく具体的にわかりやすく記載してください。契約書例では印刷物への利⽤、ウェブサイトにおける掲載を想定しています。
  《独占的利⽤許諾》
  依頼者がその著作物を独占的に利⽤したい場合(著作権者が依頼者以外の者に対してその著作物の利⽤を了解することを制限したいとき)は、その旨を契約で定めておく必要があります。
  (例)
  第○条(独占的利⽤許諾)
  前条の許諾は、独占的なものとし、甲は、⼄以外の第三者に対し、(1)印刷物における複製、販売、(2)ウェブサイトにおける掲載の各形態で本著作物を利⽤することを許諾してはならない。
  
  第5条 (著作者⼈格権)
  1 ⼄が本著作物の内容・表現⼜はその題号に変更を加える場合(拡⼤、縮⼩、⾊調の変更等も含む。)には、あらかじめ甲の承諾を必要とする。
  2 ⼄は、本著作物を利⽤するにあたって、以下のとおり著作者名の表⽰をしなければならない。
  ・__________
  
  ▶著作者⼈格権とは、著作者の精神的利益を守る、著作者のみが持っている権利です。財産権としての著作権とは異なり、譲渡や相続の対象となりません。したがって、その著作物の著作権を著作者が持つ場合はもちろんのこと、依頼者に譲渡される場合でも、著作者⼈格権は著作者が有することになります。著作物の利⽤に関し、著作者⼈格権の問題が⽣じる可能性がある場合は、この点を意識した契約書を作成する必要があります。
  ① 同⼀性保持権
  無断で著作物の内容や題号を改変すると同⼀性保持権の侵害になります。例えば、サイズの変更、⾊調の変更、縦横⽐の変更、⼀部切除等のような改変であっても、同⼀性保持権の問題が⽣じる可能性があります。
  そのため、改変する場合にはあらかじめ著作者の確認を必要とすることを念のために規定したり、⼀定の場合には著作者の確認なしに改変できることを規定したりすることがあります。
  ② ⽒名表⽰権
  著作物を利⽤するときには、その著作者名を表⽰する必要がありますが、あらかじめどのような著作者名を付せばよいか(本名なのかペンネームなのか)を契約書で定めておくとよいでしょう。著作者名を付さなくてよい場合には、その旨を契約書に明⽰しておきましょう。
  ③ 公表権
  著作権法では、著作者に「公表権」が認められています。具体的な公表の時期や⽅法については、明確にしておくことが⼤切です。どのタイミングで著作物を公表するかについては、利⽤許諾契約の場合は、契約内容のところで併せて規定することができます。
  著作者が、公表時期について、特段の指定をせず、利⽤者に任せる場合は、公表については契約書に記載しないことも多いと思われますが、利⽤者に委ねることを明確にするためその旨を契約書に明記することもあります。
  (例:変更のつど承諾を要し、かつ、⽒名表⽰を要する場合)
  第○条(著作者⼈格権)
  1 ⼄は、本著作物を改変する場合、事前に甲の承諾を得なければならない。
  2 ⼄は、本著作物を利⽤するにあたって、次のとおり著作者名を表⽰する。
   ・○○○○
  3 甲⼄は、本著作物の公表⽇を、○○年○⽉○⽇以降とすることを確認する。
  (例:⼀定範囲での変更を認め、かつ、⽒名表⽰を要しない場合)
  第○条(著作者⼈格権)
  1 甲は、⼄が本著作物を利⽤するにあたり、その利⽤態様に応じて本著作物を変更したり、⼀部を切除したりすることを予め承諾する。ただし、⼄は、これらの改変であっても本著作物の本質的部分を損なうことが明らかな改変をすることはできない。
  2 ⼄は、前項以外の改変を⾏う場合は、事前に甲の承諾を得なければならない。
  3 ⼄は、本著作物を利⽤するにあたって、著作者名の表⽰をすることを要しない。
  4 甲⼄は、本著作物の公表⽇を、○○年○⽉○⽇以降とすることを確認する。
  
  ▶注意点
  なお、納品された著作物を円滑に利⽤するため、依頼者から著作者に著作者⼈格権を⾏使しないよう求められる場合があります。著作者としては、著作者⼈格権を⾏使しないことにしてしまうと、依頼者が著作物を改変、修正した場合や著作者の⽒名を表⽰しなかった場合でも、異議を述べることができないといった不利益が⽣じるため、注意が必要です。
  
  第6条 (保証)
  甲は、⼄に対し、本著作物が第三者の著作権その他第三者の権利を侵害しないものであることを保証する。
  
  ▶納⼊された著作物が他⼈の著作権やプライバシー権等を侵害しているような場合、これを実際に利⽤する依頼者が、著作権侵害等を理由に権利者から損害賠償等の責任追及を受ける⽴場になります。このため、著作物の制作委託契約においては、著作者が著作物について他⼈の権利を侵害していないことを保証する条項を設けることがあります。トラブルへの対処について規定する場合もあります。
  もっとも、このような条項を設けた場合、著作者に対して契約違反の責任をとってもらうことができるようになるだけで、著作権やプライバシー権侵害の被害者に対する責任がなくなるわけではないので、注意が必要です。
  (例:基本)
  第○条(保証)
  甲は、⼄に対し、本著作物が第三者の著作権、プライバシー権、名誉権、パブリシティ権その他いかなる権利をも侵害しないことを保証する。
  (例:トラブルへの対処について規定する場合)
  第○条(保証)
  1 甲は、⼄に対し、本著作物が第三者の著作権、プライバシー権、名誉権、パブリシティ権その他いかなる権利をも侵害しないことを保証する。
  2 万⼀、本著作物に関して、第三者から権利の主張、異議、苦情、対価の請求、損害賠償の請求等がなされた場合、甲は⾃らの責任と費⽤負担においてこれを処理解決するものとし、⼄に⼀切の迷惑損害を及ぼさないものとする。
  
  第7条 (対価)
  ⼄は、甲に対し、写真撮影業務及び本著作物の利⽤許諾の対価、その他本契約に基づく⼀切の対価として、⾦__________円(消費税込み)を、_____年____⽉____⽇までに⽀払う。
  
  ▶報酬・対価に係る消費税や所得税(源泉徴収)については、⽀払いの相⼿⽅や報酬・対価の額などによって取り扱いが異なりますので、必要に応じ税の専⾨家に相談してください。
  
  ▶著作物を創作してもらう契約における「対価」には、以下の内容が含まれています。
  ・創作作業への対価(作業料)
  ・(著作者から著作物の利⽤の了解を得る場合)著作物の利⽤許諾の対価
  ・(著作者から著作権の譲渡を受ける場合)著作権の譲渡の対価
  対価の⽀払い⽅法には様々な⽅法がありますが、対価が著作権の譲渡に対する対価を含む場合、創作業務に対する対価がいくらで、著作権の譲渡に対する対価がいくらかという内訳を明記した⽅が望ましいといえます。
  対価が利⽤許諾に対する対価を含む場合は、創作業務に対する対価がいくらで、著作物の利⽤許諾に対する対価がいくらかという内訳を明記するのがよいでしょう。印税のように個別の結果に応じて対価を算定する⽅法もあります。
  (例:⼀括払い・利⽤許諾の⼀例)
  第○条(対価)
  ⼄は、甲に対し、本著作物創作業務及び本著作物の利⽤許諾の対価として、⾦○万円(消費税込み)を○○年○⽉○⽇までに⽀払う。
  (例:⼀括払い・著作権譲渡の⼀例)
  第○条(対価)
  ⼄は、甲に対し、本著作物創作業務及び本著作物に関する著作権譲渡の対価として、⾦○万円(消費税別途)を、○○年○⽉末⽇までに、別途甲が指定する銀⾏⼝座に振り込む⽅法で⽀払う。振り込み⼿数料は⼄の負担とする。なお、対価の内訳は、以下のとおりとする。
  ⾦△万円︓本著作物創作業務に対する対価
  ⾦□万円︓本著作物に関する著作権譲渡の対価
  (例:複合⽅式・利⽤許諾の⼀例)
  第○条(対価)
  1 ⼄は、甲に対し、本著作物の創作業務の対価として、⾦○万円を、○○年○⽉末⽇までに、別途甲が指定する銀⾏⼝座に振り込む⽅法で⽀払う。振込み⼿数料は⼄の負担とする。
  2 ⼄は、甲に対し、本著作物の利⽤許諾の対価として、以下の算式で算定される⾦額を⽀払うものとする。
  本件書籍の消費税を含まない本体価格(△△円)×使⽤⾴/全⾴×発⾏部数×□%
  3 前項の対価は、毎年 3 ⽉末⽇、9 ⽉末⽇を締め⽇として、締め⽇から30 ⽇以内に、別途甲が指定する銀⾏⼝座に振り込む⽅法で⽀払う。振込み⼿数料は⼄の負担とする。
  ※著作物が掲載される印刷物を「本件書籍」と定義しています。
  
  ▶ 注意点
  報酬の⽀払いについては、消費税を含む⾦額かどうか、また所得税は源泉徴収して⽀払うのかどうかを明らかにしておきましょう。振込の場合は、振込⼿数料を誰が負担するかについても明記するようにしましょう。
  
  第8条 (その他)
  本契約に定めのない利⽤態様については、甲⼄別途協議の上、利⽤の可否、対価等につき決するものとする。
  
  ▶特に、契約書に記載されていない利⽤を⾏う場合などは、あらためて著作者の了解を得る必要があり、このことを確認するため、このような場合は別途協議する旨の条項を設けることがあります。その他、契約書には、契約期間に関する条項、中途解約に関する条項、契約変更に関する条項、契約解除に関する条項、秘密保持に関する条項、権利義務の譲渡等禁⽌条項、合意管轄に関する条項等を置くことがあります。
  
  本契約締結の証として、本契約書2通を作成し、甲⼄記名捺印の上、各⾃1通を保持する。
   年 ⽉ ⽇
                           甲 住所
                           ⽒名 印
                           ⼄ 住所
                           ⽒名 印