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『アメリカ著作権制度の解説/著作権の存続期間』

▽ 概観

アメリカ(連邦)著作権法における著作権の存続期間(保護期間)の取り扱いは、非常に複雑です。「1909年法」と「1976年法(現行法)」との継続性を背景として、主として、著作物の「発行」や著作権の「登録」の有無、「更新」による保護期間の延長の有無によって、存続期間の取扱いが錯綜しています。これに加え、たび重なる法改正が行われており、その度、存続期間は「延長」されています。

アメリカにおいて、著作権の存続期間は、大まかに言うと、現行法である1976年法が発効した日、すなわち、「197811日」を境に異なった基準が適用されます。もっとも、197811日以後に制定されたいくつかの改正法(そのなかで最も有名なものが、19981027日に発効した「ソニー・ボノ著作権保護期間延長法」-the Sonny Bono Copyright Term Extension Act -です。)によっても、著作権の存続期間が影響を受けることになります。
なお、著作権保護期間延長法(ソニー・ボノ法)の合憲性が争われたケースとして、「ELDRED et al. v. ASHCROFT, ATTORNEY GENERAL, 537 U.S. 186(2003)」参照。

(1) 197811日以後に最初に著作権が確保された著作物(302条)

197811日以後に最初に著作権が確保された著作物に関しては、連邦著作権法は、「単一の存続期間」(a single copyright term)と、著作物を2つのカテゴリーに分類して、それぞれに異なった(存続期間の)算定方法を採用しています。

     197811日以後に創作された著作物

連邦著作権法は、197811日以後に創作、すなわち、有形的表現媒体に固定された著作物を、その創作時(固定時)から自動的に保護することとし、当該著作物に対して、「著作者の生存期間プラス70年」(the author’s life plus an additional 70 years)という「単一の存続期間」を付与することを原則としています(302(a))。
「職務著作をするものでない2人以上の著作者によって作成される共同著作物」に関しては、当該著作物の存続期間は、最終生存者の死後を基準として、その死後70年間続くことになります(同条(b))。
職務著作物、無名著作物、変名著作物に関しては、著作権の存続期間は、原則として、「最初の発行年から95年」又は「創作年から120年」の「いずれか短い方」ということになっています(同条(c))。もっとも、これらの著作物の著作者について、著作権局の記録によってその身元が特定されている場合には、上記原則に戻り、「著作者の生存期間プラス70年」が適用されることになります。

② 197811日に存在しているが、それまで発行されず又は著作権による保護を受けることのなかった著作物(303条)

連邦著作権は、197811日より前に創作されたが、発行されることも、著作権局に登録されることもなかった著作物に関しては、197811日以後、自動的に保護を与えることにしています。そして、そのような著作物の著作権の存続期間は、原則として、上記の「197811日以後に創作された著作物」に対するのと同様の方法(著作物の性質に応じて、プラス70年、又は発行後95年若しくは創作後120年)で計算されます。
もっとも、このカテゴリーに属する全ての著作物には、少なくとも25年の保護期間が保証されています(20021231日より前に存続期間が満了することはありません)。さらに、このカテゴリーに属する著作物が20021231日までに発行された場合には、その存続期間は、さらに45年間延長されることになります(20471231日より前に満了することはありません)。

(2) 197811日より前にすでに連邦著作権法に基づく保護を受けていた著作物(304(a)(b)

197811日より前にすでに連邦著作権法による保護が確保されていた著作物に関しては、現行法(1976年法)は、当該著作権の存続期間を計算するために、原則的に、1909年法のシステムを踏襲しています。しかしながら、いくらかの変更があります。
1909年法の下での保護期間
1976年法(現行法)と比較すると、方式主義を採用していた1909年法の下での保護期間のシステムは、かなり相違していると言えます。1909年法の下では、著作権は、著作物が発行された日か、未発行の著作物の場合には著作権局への登録の日に確保されることになります。そして、著作権は、そのようにして確保された日から、「最初の保護期間」として、28年間存続することになります。もっとも、著作権には、その「最初の保護期間」の最終年にあたる28年目の間に「更新」(renewal)する資格が与えられているため、当該著作権が「更新」されると、「2番目の(更新された)保護期間」として、さらに28年間、存続期間が延長されることになります。「更新」されない場合には、当該著作権は最初の28年の期間の終了によって満了し、もはや著作権による保護はありません。

197811日より前に連邦著作権法によって保護されている著作権の存続期間の計算について、1976年法は、基本的に、1909年法のシステムを引き継いでいます。もっとも、1つ大きな違いがあります。それは、更新期間の長さが、「28年」から「47年」まで増やされたことです。そして、1998年の著作権保護期間延長法(ソニー・ボノ法)は、この「47年」にさらに20年を追加して「67年」まで、存続期間を延長させました。つまり、197811日にすでに保護されている著作権(最初の保護期間中に197811日を迎える著作権)の存続期間は、56年間(最初の保護期間の28年+更新期間の28年)から、「95年間」(最初の保護期間の28年+更新期間の67年)に大きく延長されることになりました。
なお、ソニー・ボノ著作権保護期間延長法の発効(19981027日)時点でいまだ「更新期間」にある著作権(更新期間中に19981027日を迎える著作権)は、当該著作権が最初に確保された日から95年間存続するものとされます(304(b))。

(3)存続期間の満了日

1976年法は、すべての著作権の存続期間は、当該存続期間が満了することとなる暦年の最終日まで続く、と規定しています(305条)。
AK