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著作権判例セレクション
【著作権の制限】法41条の意義と解釈
▶令和4年11月24日東京地方裁判所[令和3(ワ)24148]▶令和5年7月13日知的財産高等裁判所[令和5(ネ)10001等]
(注) 本件は、原告が、被告の管理するブログに原告が著作権を有する各動画(「本件各動画」)をキャプチャした静止画が投稿され、原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害された旨を主張して、被告に対し、不法行為(民法 709 条)に基づき、所定の損害賠償金等の支払を求めた事案である。
時事の事件の報道の抗弁の成否について
被告は、【本件各動画を利用した本件各記事の投稿】は、社会において有用で公衆の関心事となりそうな新しい事業を計画している一般企業家が存在する事実及びその事業計画に対する投資家の判断・評価という近時の出来事を公衆に伝達することを主目的とするものであり、時事の事件の報道(法41条)に当たる旨を主張する。
しかし、そもそも、本件各動画は、その内容に鑑みると、一般企業家が投資家に対して事業計画のプレゼンテーションを行い、質疑応答等を経て、最終的に投資家が出資の可否を決定するプロセス等をエンタテインメントとして視聴に供する企画として制作されたものというべきであって、それ自体、「時事の事件」すなわち現時又は近時に生起した出来事を内容とするものではない。本件各記事は、前記認定のとおり、このような本件各動画の【全部又は一部】の概略を把握し得るものであると共に、これを視聴した被告の概括的な感想をブログで【披れきするなどしたものにすぎず】、その投稿をもって「報道」ということもできない。
したがって、本件各記事【の投稿】は、そもそも「時事の事件の報道」とは認められないから【、本件各記事における本件各動画の利用は】、適法な「時事の事件の報道のための利用」(法41条)とはいえない。この点に関する被告の主張は採用できない。
【この点に関し、控訴人は、当審において、原告チャンネルで配信される動画(「令和の虎」)において取り上げられた事業計画は実際に存在するものであり、その中には現実の事業として実現されたものも存在するところ、事業計画が実現し、新しい事業が開始された場合には、インターネットニュース等で取り上げられることもあるのであるから、本件各記事の投稿は、プレゼンテーションがされた事業計画について、将来的に事業として成功する見込みがあるとして投資家が投資したという時事の事件(現時又は近時に生起した出来事を内容とするもの)を報道するものであるといえると主張する。
確かに、控訴人が援用する証拠には、原告チャンネルで配信された動画(「弁護士に頼らずとも裁判を戦えるようにしたい!【A】[356人目]令和の虎」)において取り上げられた事業(いわゆる本人訴訟を支援するサービス)につき、サービスの提供が開始されたとの記載があるが、もとより上記の動画は、本件各動画とは異なる動画であるし、また、仮に本件各動画において取り上げられた事業計画が実際に存在するものであり、その中に後に現実化したものがあるとしても、そのことは、一般企業家が投資家に対して事業計画のプレゼンテーションを行い、質疑応答を経て、最終的に投資家が出資の可否を決定するプロセス等をエンタテインメントとして視聴に供する企画として制作されたとの本件各動画の上記内容ないし性質に影響を及ぼすものではないから、控訴人の上記主張は、本件各記事の投稿が時事の事件の報道に該当しないとの上記結論を左右するものではない。】