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著作権判例セレクション
【不法行為】将来発生する不法行為(著作権侵害)による損害賠償請求の可否
▶平成28年10月19日知的財産高等裁判所[平成28(ネ)10041]
1審原告は,本件口頭弁論終結以後も,1審被告らの不法行為が継続することが確実であると主張して,将来の不法行為に基づく損害賠償を請求している。
将来の給付を求める訴えは,あらかじめその請求をする必要がある場合に限り認められるところ(民事訴訟法135条),継続的不法行為に基づき将来発生すべき損害賠償請求権については,たとえ同一態様の行為が将来も継続されることが予測される場合であっても,損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず,具体的に請求権が成立したとされる時点において初めてこれを認定することができ,かつ,その場合における権利の成立要件の具備については債権者においてこれを立証すべく,事情の変動を専ら債務者の立証すべき新たな権利成立阻却事由の発生として捉えてその負担を債務者に課するのは不当であると考えられるようなものは,将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有しないものと解するのが相当である(最高裁昭和56年12月16日大法廷判決,最高裁平成19年5月29日第三小法廷判決等参照)。
本件についてみると,本件店舗においては,ライブの出演者自らが演奏曲目を決定しており,1審被告らによる1審原告著作物の利用楽曲数は毎日変動するものであり,その損害賠償請求権の成否及びその額を一義的に明確に認定することはできず,具体的に請求権が成立したとされる時点において初めてこれを認定することができるものである。1審被告らは,平成28年4月以降,本件店舗の営業形態を変更し,平成29年春頃には閉店予定であると主張し,現に本件店舗の貸借契約が平成29年5月31日に終了することに照らすと,口頭弁論終結日以降の損害賠償請求権の成否及びその額を一義的に明確に認定することは,なおのこと困難である。さらに,権利の成立要件の具備については権利者である1審原告が主張立証責任を負うべきものである。
そうすると,本件の損害賠償請求権は,将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有さないから,1審被告らに対する金員支払請求のうち,口頭弁論終結日の翌日である平成28年9月13日以降に生ずべき損害賠償金の支払を求める部分は不適法であるといわざるを得ない。そして,このことは,1審原告の請求が,将来の不当利得返還請求であると解した場合も,同様である。
したがって,上記部分に関する訴えは,いずれも却下を免れない。