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著作権判例セレクション
【権利の目的とならない著作物】判決書に引用された鑑定書は「権利の目的とならない著作物」に当たるか
▶令和元年8月27日京都地方裁判所[平成30(行ウ)26]
不開示情報3は,前記前提事実のとおり,
裁判所の認定事実として別件甲9及び別件甲10の鑑定内容が引用されている部分である。
被告は,鑑定書が著作物に当たり,これが引用された判決書を開示することがA社又はBの著作権侵害に該当する旨主張する。
しかしながら,鑑定書そのものについては,「思想又は感情を創作的に表現したものであつて,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)に該当する「その他の言語の著作物」(同法10条1項1号)として,作成者の著作権が及ぶと解する余地があるとしても,不開示情報3は,裁判所が作成する別件判決の中で,証拠として提出された鑑定書(別件甲9及び別件甲10)の内容を判断に必要な範囲で引用しているにすぎないところ,裁判所の判決は著作権の目的とはならないとされている(同法13条3号)。そうすると,鑑定書自体は著作物であるとしても,それが証拠として提出され,裁判所が作成する判決中でその判断の一部として引用される限りにおいては,著作権の目的とはならないと解するのが相当である。
したがって,不開示情報3の開示によって,A社又はBの著作権が侵害されるということはできない。また,前記のとおり,A社及びBは,別件訴訟に証拠として提出する予定であることを認識した上でそのための資料として別件甲9及び別件甲10を作成したものであるから,別件判決において,証拠として採用された別件甲9及び別件甲10の内容が裁判官の判断資料とされ,判決書に証拠として引用されることは当然想定していたはずであること,一般に,判決書は,公共性,公益性を有する情報として広く報道されたり,裁判所のホームページや各種判例雑誌等を通じて公表されたりする場合があることなどに鑑みれば,別件判決の内容が情報公開等の手続を通じて開示されることに伴い,別件甲9及び別件甲10の鑑定書のうち判決中で引用された部分の内容が公にされることによって,鑑定書の作成者であるA社又はBの「権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ」があるとは認め難く,他に上記のおそれが存在することを認めるに足りる証拠はない。
したがって,不開示情報3が開示されることにより,A社又はBの「権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがある」とは認められないから,不開示情報3が7条3号に該当するとの被告の主張は,理由がない。