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著作権判例セレクション

コンテンツ契約紛争事例通常のライセンス料の10倍の違約金合意を公序良俗に反しないとした事例

▶令和3324日東京地方裁判所[平成30()38486]▶令和31129日知的財産高等裁判所[令和3()10035]
本件違約金合意の公序良俗違反による無効の成否について
ア 被告会社は,本件違約金合意は,著しく高額な違約金を定めたものであり,公序良俗に反するものとして無効であると主張する。
しかしながら,当該合意がされた経緯を検討すると,前記のとおり,被告会社は,本件平成20年契約に違反して,ライセンス数を上回る多数の医師会の業務において継続的に本件プログラムを使用しており,前記のとおり,平成30年3月の本件新プログラムへの移行作業の際に,上記の被告会社の使用状況が原告に発覚したことで,本件平成30年契約においては,府中市医師会に加えて,契約の対象とする医師会が追加され,それとともに,本件違約金合意が締結されたものである。そうすると,本件違約金合意は被告会社による過去の不正使用を踏まえて,それを抑止するために設けられたものと解されるから,前記のとおり,被告会社による継続的な不正使用が長期間発覚しなかったことも考慮すれば,本件違約金合意を設ける必要性は高かったといえる。
また,本件違約金合意は,いずれも事業者である原告と被告会社とが,レンタル契約書において,被告会社が本件プログラムを使用できる医師会名を明示した上で,それ以外の医師会の利用については違約金支払義務が発生する旨を記載したものであって,合意内容とその違反の範囲は明確である。さらに,本件平成30年契約においては,前記前提事実のとおり,本件プログラムの使用に係る医師会を1か月単位で増減させることが可能であったから,被告会社において,本件違約金合意に反しないように本件プログラムを使用することに特段の障害はなかったといえる。
このような事情からすれば,本件違約金合意における違約金額が通常のライセンス料の10倍という額であったことを考慮しても,本件違約金合意が公序良俗に反するとはいえず,被告会社の上記主張は理由がない。
イ 被告会社は,被告会社が原告から提示された本件違約金合意を含む本件平成30年契約を締結するほかない状況にあったから,本件違約金合意は公序良俗に反するものであると主張する。
しかしながら,被告会社は,本件平成30年契約の内容に従って,必要とするライセンス数の契約を締結し,そのライセンス料を支払えば,本件プログラムを継続して使用することができたのであるし,被告Aは,本人尋問において,平成30年当時に本件プログラムと同様の機能を有するプログラムを外部に委託して開発することは可能であった旨も供述している。
これらに照らせば,被告会社において,本件違約金合意を含む本件平成30年契約を締結する以外に取り得る手段がなかったとは認められない。
したがって,被告会社の上記主張に係る事情は,前記アの結論を覆すに足りるものではない。
[控訴審同旨]