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著作権判例セレクション

【言語著作物】新聞記事の著作物性

▶令和41130日東京地方裁判所[令和2()12348]▶令和568日知的財産高等裁判所[令和5()10008]

本件各記事の著作物性について
証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件各記事は、いずれも、担当記者が、その取材結果に基づき、記事内容を分かりやすく要約したタイトルを付し、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係を端的に記述すると共に、関連する事項として盛り込むべき事項の選択、記事の展開の仕方、文章表現の方法等についても、各記者の表現上の工夫を凝らして作成したものであることがうかがわれる。したがって、本件各記事は、いずれも「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」すなわち著作物(法 2 1 1 号)と認められるのであって、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(法 10 2 項)には当たらない。
これに対し、被告は、本件各記事は著作物に当たらないとして縷々主張する。しかし、著作物といえるための創作性の程度については、高度な芸術性や独創性まで要するものではなく、作成者の何らかの個性が発揮されていれば足りる。このような意味での創作性は、内容における虚構性を当然の要素ないし前提とするものではないから、新聞記事がその性質上正確性を求められることと何ら矛盾せず、両立し得るものであることは論を俟たない。その他被告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する被告の主張は採用できない。

[控訴審同旨]
一審被告は、本件各記事が事実を伝達するものにすぎず、文章表現もありふれているなどとして著作物性を否定する旨の主張をするが、本件各記事において、記事内容を分かりやすく要約したタイトルが付され、文章表現の方法等について表現上の工夫が凝らされていることは原判決認定のとおりである。一審被告は、本件各記事の著作物性を否定する例として甲第9号証の308の記事を挙げるものの、証拠及び弁論の全趣旨によれば、同記事は、同日(平成31年3月28日)に掲載された他社記事と比較して、東急電鉄の発祥や設立経緯についての記載はなく、かえって商号変更の理由が分社化に伴うものであることを記載するなど、記載内容の取捨選択がされ、記者の何らかの創造性が顕れており、著作物であると認められる。
本件各記事は、法10条2項にいう「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」とはいえないから、一審被告の上記主張は採用することができない。