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著作権判例セレクション

【言語著作物】新聞記事の著作物性

令和4106日東京地方裁判所[令和2()3931]▶令和568日知的財産高等裁判所[令和4()10106]
【1審被告が平成30年4月1日から平成31年4月16日までの間に本件イントラネットの掲示板に原告が発行した東京新聞に係る平成30年度掲載記事(合計133本。)を掲載したことは、前記のとおりである。】平成30年度掲載記事のうちの一部の記事について、被告は、その著作物性を争っている。
【そこで検討するに】、平成30年度掲載記事は、事故に関する記事や、新しい機器やシステムの導入、物品販売、施策の紹介、イベントや企画の紹介、事業等に関する計画、駅の名称、列車接近メロディー、制服の変更等の出来事に関する記事である。そのうち、事故に関する記事については、相当量の情報について、読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなどされており、表現上の工夫がされている。また、それ以外の記事については、いずれも、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係に加えて、当該テーマに関連する相当数の事項を適宜の順序、形式で記事に組み合わせたり、関係者のインタビューや供述等を、適宜、取捨選択したり要約するなどの表現上の工夫をして記事を作成している。【これらの点において、平成30年度掲載記事は、各記事の作成者の個性が表れており、いずれも作成者の思想又は感情が創作的に表現されたものと認められるから、著作物に該当するものと認められる。
これに対し、1審被告は、平成30年度掲載記事は、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(著作権法10条2項)であり、著作物に該当しない旨主張する。
しかしながら、上記認定のとおり、平成30年度掲載記事は、事故に関する記事や、新しい機器やシステムの導入、物品販売、施策の紹介、イベントや企画の紹介、事業等に関する計画、駅の名称、列車接近メロディー、制服の変更等の出来事に関する記事であるところ、そのうち、事故に関する記事については、相当量の情報について、読者に分かりやすく伝わるよう、順序等を整えて記載されるなど表現上の工夫をし、それ以外の記事については、いずれも、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係に加えて、当該テーマに関連する相当数の事項を適宜の順序、形式で記事に組み合わせたり、関係者のインタビューや供述等を、適宜、取捨選択したり要約するなどの表現上の工夫をして記事を作成していることが認められ、各記事の作成者の個性が表れており、いずれも作成者の思想又は感情が創作的に表現されたものと認められるものであり、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」であるということはできない。また、著作物といえるための創作性の程度については、高度な芸術性や独創性まで要するものではなく、作成者の何らかの個性が発揮されていれば足り、報道を目的とする新聞記事であるからといって、そのような意味での創作性を有し得ないということにはならない。
したがって、1審被告の上記主張は採用することができない。その他1審被告は、平成30年度掲載記事が著作物に該当しない理由を縷々指摘するが、いずれも採用することができない。】