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著作権判例セレクション

【演奏権】音楽教室での演奏に演奏権が及ぶか

令和3318日知的財産高等裁判所[令和2()10022]
音楽教室における2小節以内の演奏について演奏権が及ぶか
控訴人らは,引用に係る原判決のとおり,音楽教室における2小節以内の演奏については,短すぎるため,どの楽曲を演奏しているかを特定することができず,著作者の個性が発揮されているということはできないから,著作物に当たらず,このような演奏については演奏権が行使されたとはいえない旨主張する。
しかしながら,一つの楽曲中から取り出した2小節分につきいずれも著作物性がないなどということはおよそ考え難い。
前述のとおり,音楽教室における演奏の目的は演奏技術等の習得にあり,演奏技術等の習得は音楽著作物に込められた思想又は感情の表現を再現することなしにはあり得ないから,音楽教室において,著作物性のない部分のみが繰り返しレッスンされることを想定することはできない。したがって,仮に,レッスンにおいて2小節を単位として演奏が行われるとしても,それは,終始,特定の2小節のみを繰り返し弾くことではなく,2小節で区切りながら,ある程度まとまったフレーズを弾くことが通常であると推認され,これに反する証拠の提出はない。そして,本件使用態様のとおり,レッスンにおいては特定の課題曲が演奏されることが決まっているのであるから,特定の2小節が演奏されたとしても,当該部分が課題曲のどの部分であるかは判然としているのであり,課題曲の2小節分が様々な形で連続的・重畳的に演奏されたとしても,それが課題曲の演奏であると認識され,かつ,その楽曲全体の本質的な特徴を感得しつつ,その特徴が表現されているとみるのが相当である。
したがって,控訴人らの上記主張は,採用することができず,演奏された小節数を問わず,演奏権の侵害行為が生じる。