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著作権判例セレクション

【言語著作物】地質用語は著作物か

平成141114日東京高等裁判所[平成12()5964]
また,「七国峠ローム層」等の名称も,地名と学術用語を組み合わせただけものであり,著作権法により使用を制限するに値するような個性が現れているとは認められない。
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「浸食小起伏面」という用語は,これが,「大磯丘陵に分布する二宮層群の基底の不整合面が,長期にわたって,陸上で風化削剥された広大低平な陸生浸食平坦面起源ではないか,そこに,海面が上昇してきて,二宮層が堆積したのではないか。」という発見ないし仮説を示し,この発見ないし仮説が大きな学問的価値を有するとしても,「浸食小起伏面」という用語自体は,地形学の用語を基にした語であって,一定程度以上の個性ある表現であるとは認められない。
これらの仮説の提唱者,あるいは事実の発見者の業績を明らかにするため,それが分かるように適宜文献を引用したり,注釈を加えたりすべきであるとしても,それを,著作権法による保護の問題として取り上げることはできない。
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原告は,「畑沢火山」という用語は,思想的で創作的な仮説に基づく用語であり,創作性を有する,と主張する。
ある特定の場所に,火山があり,それが活動していたという事実ないし仮説に到達するためには,豊富な経験知識を前提に,膨大な現地調査とそれに基づく分析をすることを要するものであり,その結果得られた事実や仮説が尊重に値することはいうまでもないところである。しかしながら,著作権法は,事実の発見そのものを保護するものでもなければ,事実に関する仮説(より一般的にいえば思想・感情)そのものを保護するものでもない。したがって,「畑沢火山」が示す仮説が仮説自体としては独創的なものであるとしても,それだけで,その仮説を具体的に表現したものに著作権法上の創作性が認められることになるわけのものではない。
そして,「畑沢火山」という用語は,地名と「火山」という用語を組み合せたものにすぎず,その表現方法自体はごく普通のものという以外になく,そこに著作者の個性が表れているとは,到底認めることができない。