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著作権判例セレクション
【言語著作物】芸能人に対するインタビュー記事の著作物性
▶平成10年10月29日東京地方裁判所[平成7(ワ)19455]
一 争点1(著作物性)について
1 著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいい(著作権法2条1項1号)、その中には「小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物」(同法10条1項1号)が含まれるが、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」は、著作物に該当しないとされている(同条2項)。
右の「思想又は感情」は人間の精神活動全般を指し、単に事実(社会的事実、歴史的事実、自然現象に関する事実等)のみを記載したものは著作物には当たらない。また、「創作的」とは、表現の内容について独創性や新規性があることを必要とするものではなく、思想又は感情を表現する具体的形式に作成者の個性が表れていれば足りる。したがって、客観的な事実を素材とする表現であっても、取り上げる素材の選択、配列や、具体的な用語の選択、言い回しその他の文章表現に創作性が認められ、作成者の評価、批判等の思想、感情が表現されていれば著作物に該当するということができ、著作権法10条2項は、単なる日々の社会事象そのままの報道や、人事異動、死亡記事等、事実だけを羅列した記事が著作物でないことを確認的に規定したものである。さらに、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する」とは、知的、文化的精神活動の所産全般を指すものである。
また、一個の著作物の一部でも、その部分のみで右にいう思想又は感情の創作的表現であると認められれば、これを著作物ということができる。
2 これを本件についてみるに、原告記事のうち、原告らが著作権、著作者人格権の侵害があったと主張する別紙「対照表」記載の原告記事のうちには、専ら原告個人らに関する事実を内容とするものもあるが、当該事実を別の表現方法を用いて記述することも可能であると解され、具体的な文章表現に各原告記事を作成した者の個性が表れているといえるから、これらも著作物であるということができる。
3 したがって、右対照表記載の原告記事は、いずれも著作権法にいう著作物に該当すると認められる。