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著作権判例セレクション

【編集著作権】「編集権」「編集構成権」なる権利は認められるか

▶平成13829日東京高等裁判所[平成13()147]
著作権の対象となる著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法2条1項1号)ところ、控訴人が編集権及び編集構成権の具体的内容として主張するもののうち、特殊小型変形版の大きさ及びソフトカバーの表紙仕上げを採用し、右頁に物語を配し、これに相応する絵を左頁に配し、右頁の右下方に小さなカットを挿入し、活字配列を左右9行を基本とし、表紙に各物語のシンボルとなる絵を描き、最上段に「名作アニメ絵本シリーズ」又は「アニメ昔ばなしシリーズ」を配し、右側にタイトル番号を付し、裏表紙に出版するシリーズ本の内訳一覧広告を掲載するなどの構成を採用したという点については、これらの構成自体、いずれも思想等の表現ではなく創作に係る要素もないから、著作物とは認められず、素材の選択又は配列によって創作性を有する場合に編集著作物(同法12条1項)として著作物性が認められるかどうかが問題となるにすぎない。また、控訴人が編集権及び編集構成権の具体的内容として主張するもののうち、物語内容、絵等に独自の翻案をした点は、新たに付加された部分に創作性がある場合に二次的著作物(同法2条1項11号)として保護される範囲が問題とされる。このように、著作権法は、翻案に創作性がある場合は二次的著作権により、素材の選択又は配列によって創作性を有する場合は編集著作権により、それぞれ著作物として保護を図ることを予定しており、同法上明記されたこれらの権利とは別個に、控訴人の主張する編集権及び編集構成権という法令上の規定を欠く権利を解釈上認めるべき法的根拠はない。
控訴人書籍には、物語内容、絵等に独自の翻案をした点はあるが、控訴人が被控訴人会社により盗作されたと主張するこれらの点について、被控訴人会社が二次的著作権を侵害するものでないことは上記の原判決引用部分に判示されたとおりであり、その余の構成については、一般的にありふれた構成であって、特に控訴人書籍のこれらの構成について素材の選択又は配列による創作性を認めるに足りる証拠はなく、編集著作権の侵害にも当たらない。
したがって、控訴人の主張する編集権及び編集構成権を解釈上認めることはできず、これらの権利に該当するものとして控訴人の主張する点は、二次的著作権又は編集著作権として保護を受けることもできないから、結局、この点に関する控訴人の主張は、理由がない。