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著作権判例セレクション
【同一性保持権】誤った説明が付された写真について同一保持権侵害を認定した事例
▶平成7年2月21日青森地方裁判所[平成4(ワ)344]▶平成9年1月30日仙台高等裁判所[平成7(ネ)207]
被告Aによる原告の本件写真著作権侵害の有無について
1 前記認定のとおり、原告は昭和51年ころに被告Aに熊野地方の本件石垣の写真数枚を送付していること、その際に原告は被告Aに対し熊野地方の本件石垣について説明し、被告Aが所蔵している古文書に石垣に関する記事がないかどうか尋ねていること、それに対して被告Aは、そのような記事はないと回答していること、本件写真は被告Aが著者として表示されている本件1ないし3の各書籍に別紙のとおり津軽中山に存在したとされる耶馬台城跡の写真として掲載されていること、以上の各事実が認められ、さらに本件1及び2の各書籍には、本件写真の説明として、別紙のとおり、昭和38年ころ、あたかも被告A本人が営林署のK氏から直接受け取ったかのように記述されていることが認められる。
2 以上に認定説示したところを総合すると、被告Aは、原告から本件写真の送付を受け、これらが原告の撮影した熊野地方の本件石垣の写真であることを知りながら、津軽中山に存在したといわれている耶馬台城跡の写真であるとして本件1ないし3の各書籍に掲載したものと推認される。被告Aは、本件1及び2の各書籍の原告指摘部分はいずれも被告Aが執筆したものではなく、また、引用されている写真もどこかで入れ違ったものかも知れないが被告Aには定かではないと主張するが、前段摘示の各事実並びに弁論の全趣旨に照らして、右主張は到底採用できない。
したがって、被告Aは、原告が著作権を有する本件写真を事実に反する誤った説明文のもとに本件1ないし3の各書籍に無断掲載したものであって、これは原告の著作権(複製権)及び著作者人格権(公表権及び氏名表示権)を侵害するものである。
[控訴審]
本件写真の著作権侵害
本件訴状に添付されている本件写真①ないし⑥と、(証拠)を対照し、また、(証拠)も併せ検討すると、本件書籍1である東日流中山古代中世遺跡振興会発行の「知られざる東日流日下王国」に掲載されている写真は、本件写真①ないし⑥と同一であり、本件書籍2である八幡書店発行の「知られざる東日流日下王国」に掲載されている写真は本件写真①と同一であり、また、本件書籍3である東日流中山史跡保存会発行の「五所川原市と東北古代中世史抄第二号」に掲載されている写真は本件写真④と同一であることが明らかであり、また原審における控訴人本人尋問の結果によれば、控訴人は本件写真を公表していないことが認められる。したがって、本件書籍1ないし3への本件各写真の掲載は控訴人の複製権を侵害し、さらに公表権、氏名表示権を侵害することが明らかであり、また、(証拠)によれば、右各写真には、いずれも津軽中山の耶馬台城跡である旨の説明が付されていることが明らかであるから、事実と異なる右説明の下に本件写真を掲載した点で同一性保持権をも侵害するというべきである。