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著作権判例セレクション

【写真著作物】平面的な作品を撮影した写真に創作性は認められるか

▶平成101130日東京地方裁判所[昭和63()1372]
本件写真(一)及び(二)の著作物性について
(一)証拠と弁論の全趣旨によると、本件写真(一)及び(二)は、原作品がどのようなものかを紹介するために版画をできるだけ忠実に再現することを目的として撮影された版画全体の写真であること、これらの対象となった版画は、おおむね平面的な作品であるが、番号…については凹凸の部分があること、版画をできるだけ忠実に再現した写真を撮影するためには、光線の照射方法の選択と調節、フィルムやカメラの選択、露光の決定等において、技術的な配慮をすることが必要であること、以上の事実が認められる。
(二)ところで、本件写真(一)及び(二)のように原作品がどのようなものかを紹介するための写真において、撮影対象が平面的な作品である場合には、正面から撮影する以外に撮影位置を選択する余地がない上、右認定のような技術的な配慮も、原画をできるだけ忠実に再現するためにされるものであって、独自に何かを付け加えるというものではないから、そのような写真は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法211号)ということはできない。
なお、原告らは、平面的な作品を撮影する場合であっても、原画の芸術的特性を理解して、それを表現することが不可欠である旨主張し、本件写真(一)及び(二)の個々の作品について、原画の芸術的特性やそれを表現するために工夫した点について主張しており、また、証人E及び原告Aは、平面的な作品を撮影する場合であっても原画の芸術的特性を理解して、それを表現することが必要である旨供述し、(証拠)にも同趣旨の記載があるが、そのようなことがあったとしても、それは、原画をできるだけ忠実に再現するためのものであると認められるから、これらの主張や証拠も右認定を覆すに足りるものではない。
(三)また、右認定のとおり、本件写真(一)及び(二)の撮影対象には、完全に平面ではなく、凸凹があるものがあるが、証拠と弁論の全趣旨によると、それらの凸凹はわずかなものであり、それがあることによって撮影位置を選択することができるとも認められないから、これらの完全に平面ではない作品を撮影した写真についても著作物性を認めることはできない。