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著作権判例セレクション
【編集著作物】写真集の編集著作物性を認めた事例
▶平成19年1月31日横浜地方裁判所[平成16(ワ)3460]▶平成19年07月25日知的財産高等裁判所[平成19(ネ)10022]
本件写真集の著作物性について
ア 上記のとおり,本件写真集に掲載された写真は,プロの写真家であるAが本件各人形を撮影したものであり,それ以外に同人が以前に撮影し,保有していた風景写真が2枚含まれている。そして,上記本件各人形の写真は,本件各人形の形状,色彩等をそのまま正確に表現することを旨として
例えば 照明を明るくし, どの人形についても同じように正面, 側面等から写実的に表現したというものではなく,専門的な知識,技能を生かして,照明,構図,カメラアングル,背景等を選択,調整する等の工夫を施しながら撮影されたものと認められる。そして,これらの写真は,例えば「迷子の子猫ちゃん」という人形について,背負われている子猫の表情が浮き出るように照明を工夫し,その部分をクローズアップした写真であるとか
「飛行少年」という人形について,背後から撮影し,背景を,白として前方に広がりを持たせている等,見る者に本件各人形自体を超えた物語性や印象等を与えるものとなっており,そこに写真としての創作性があるといえる。
そして,これらの写真をまとめた写真集としての本件写真集は,写真の選択,配置,レイアウト等に種々の工夫が加えられており,例えば, 「ホ~ムラン」という人形と「あこがれのボギー」という人形をともに背後から,背景を白として撮影した写真を見開きで掲載した次の頁には,背景を黒として同じ人形の正面からの写真を見開きで掲載したり, 「偉大なる一歩」という人形の写真を裏焼きを交え,向きを変えて見開き2頁に8枚掲載したり,また,「猛牛のり」という人形の写真と「よみがえる開拓者魂」という人形の写真の間にこれらの人形が活躍する背景を思わせる荒野の風景写真が挿入されていたり, 「子供たちのもとへ」等の3体のサンタクロースの人形の写真と「グランパパ」という贈り物を抱えた人形の写真との間に雪景色の風景写真が挿入され,季節感が醸成されている等,たんに上記の写真を順番に並べたといったものではなく,これらの写真に一定の動きを与えたり,物語性を付与するものとなっており,そこに編集物としての創作性があるものと認められる。
以上のとおり,本件写真集は著作権法2条1項1号にいう「著作物」と認められる。
イ 原告は,本件写真集は,原告が本件各人形に込めた思想表現の内容を超える創作性がなく著作物とはいえない旨主張するが,本件写真集に掲載された写真及びこれらの写真を編集したものとしての本件写真集には上記のとおり本件各人形が有する創作性とは異なる別個の創作性があるものと認められるところであり,原告が供述しているようにたんなる作業というのは相当でない(原告は,自らが本件写真集の著作権を有しており,これが侵害された旨主張しながら,その一方で上記のように主張することは矛盾している。)。
したがって,原告の上記主張は当を得ず,採用できない。