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著作権判例セレクション

いわゆる懲罰的損害賠償請求を認めなかった事例

平成170331日大阪地方裁判所[平成15()12075]
() 原告P1は、使用料の算出に当たり、別紙料金一覧表の「L無断使用の賠償規定による請求金額」の10倍を乗じることを主張する。
しかし、我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補填して、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり、加害者に対する制裁や、将来における同様の行為の抑止を目的とするものでないから、著作権侵害について、使用料相当額の賠償によって、被害者が被った不利益を補填し、不法行為がなかったときの状態に回復させることができるならば、それを超える金額の賠償は、認められないというべきである。本件においては、被告が原告P1の著作物である写真を無断利用して、原告P1がその使用料を得ることができなかったものであり、使用料相当額の賠償がされれば、被害者である原告P1が被った不利益を補填し、不法行為がなかったときの状態に回復させることができると認められるから、それを超える金額の賠償は認めることができないというべきである。
また、別紙料金一覧表所定の使用料は、本来的には、写真の利用許諾契約の契約当事者間における使用料を予定したものである。しかし、証人P12の証言及び弁論の全趣旨によれば、前記の各写真は、被告が、写真の企画をし、撮影対象たる人物の手配をするとともにその肖像権の使用許諾を受け、被告発行の雑誌に掲載するために原告会社に撮影料を支払って撮影に至ったものであることが認められるところであって、上記事実を考慮すれば、本件においては、原告P1が上記各写真の著作権の行使につき被告から受けるべき使用料相当額は、別紙料金一覧表の使用料を踏まえて算定するのが相当である。
したがって、原告P1の前記主張は、採用することができない。