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著作権判例セレクション
実演家の同一性保持権侵害を認めなかった事例
▶平成28年2月16日東京地方裁判所[平成25(ワ)33167]▶平成28年11月2日知的財産高等裁判所[平成28(ネ)10029等]
(1)
争点7(同一性保持権侵害の不法行為の成否)について
原告Aは,被告らが,①MP3,AAC又はWMA等の圧縮フォーマットを利用して本件楽曲の音声を圧縮して配信したこと及び②本件楽曲12曲を曲毎に配信したことが,いずれも本件楽曲についての同一性保持権を侵害する旨主張する。
そこで検討するに,音声の圧縮によって本件楽曲の音質が一定程度変化することについては被告らも認めるところであるが,配信時のデータの圧縮に伴う技術的な制約によるものであって「やむを得ないと認められる改変」(法90条の3第2項)に当たるというべきである上,原告Aが本件契約後の平成22年12月27日に被告Bに送信したEメール中に「圧縮をやって頂きたいと思っておりました。」「引き続き圧縮をお願いできますでしょうか?」などの記載があることからすれば,原告Aも,本件楽曲の圧縮を了承していたことが推認される。こうした事情に照らせば,上記①の行為について,原告Aの同一性保持権を侵害するものということはできない。なお,本件楽曲はいずれも独立の楽曲であり,原告Aが本件CDにおける本件楽曲の配列を工夫したとしても,この点は実演家の同一性保持権の保護範囲に含まれるものではないから,上記②についても原告Aの同一性保持権を侵害するものとは認められない。