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著作権判例セレクション

レコード製作者の権利の確認請求を認めた事例

平成251120日東京地方裁判所[平成24()8691]
() 本件は,原告が,被告に対し,原告の歌唱を録音したCDについてのレコード製作者の権利を有することの確認などを求めた事案である。

2 レコード製作者の権利の確認請求について
(1) 著作権法上の「レコード製作者」とは,「レコードに固定されている音を最初に固定した者」(著作権法2条1項6号)をいうが,ここでいう「固定した者」とは,物理的な録音行為の従事者ではなく,自己の計算と責任において録音する者,通常は,原盤制作時における費用の負担者がこれに該当するというべきである(東京地裁平成19年1月19日判決)。
(2) これを本件についてみると,平成22年11月11日に原告が被告に370万円を交付したことは争いがないところ,上記のとおり,この370万円は本件CDの製作費全額として交付し,その際,レコード製作者の権利は原告に帰属させるという合意があったというのであり,その後も本件CDの製作費の負担やレコード製作者の権利の帰属を変更するような合意はされなかったことが認められるから,本件CDのレコード製作者は原告であり,本件歌唱を録音した本件マスターCDが作成された時点で,原告が本件CDのレコード製作者の権利の全部を原始的に取得したものというべきである。
(3) 被告の主張について
ア 被告の主張が変遷していること
被告は,本件CDの「レコード製作者の権利」が原告に帰属することを争っているところ,被告の主張は,以下のとおり変遷している。
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(4) 以上によれば,本件CDのレコード製作者は原告であり,原告がレコード製作者の権利を有していると認められるから,原告によるレコード製作者の権利の確認請求は理由がある。
3 本件マスターCDの引渡請求について
 (1) 被告が本件マスターCDを所持(占有)していることは争いがない。
 (2) マスターCDの所有権は,特段の合意がない限り,製作費を投じてマスターCDを製作させたレコード製作者に原始的に帰属するものとみるのが相当であり,本件においてこれと異なる合意をした証拠もないから,本件マスターCDの所有権は,レコード製作者である原告に原始的に帰属したものと認められる。
(3) 原告は,複製作業に必要な限度で被告に本件マスターCDの占有権原を与えていたものと思われるが,遅くとも本件訴状の送達をもって返還を請求し,被告は占有権原の抗弁を主張していないのであるから,原告は,被告に対し,所有権に基づき,本件マスターCDの引渡しを求めることができる。