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  著作権判例セレクション
   写真著作物の著作権譲渡を認めなかった事例
  
  
  ▶令和3年7月7日東京地方裁判所[令和2(ワ)31409]
  1 争点1(本件プロフィール画像に関する権利侵害の明白性)について
  
  (1)
本件写真の著作物性について
  
  前記前提事実及び証拠によれば,本件写真は,顔を左に少し傾け,15 左半身を右半身よりもカメラに近い位置に向けているAが,左手で持っているノートパソコンに右手を添える様子を撮影したモノクロの肖像写真であり,構図やアングル,光の当て方などにおいて工夫がされているものと認められる。同写真は,撮影者の個性が現れ,撮影者の思想又は感情を創作的に表現したものとして,著作物に当たる。
  
  (2)
本件写真の著作権及び著作者人格権の帰属について
  
  原告は,本件写真の著作権を撮影料金の支払時に撮影者のGから譲り受けたと主張し,これを証するものとして,G作成の「請書」並びに原告代表者及びGの各陳述書を提出する。
  
  しかし,甲4の「請書」については,①原告宛ての請求書であるにもかかわらず,宛先である原告名の横に原告の社印が押印されていること,②同文書左上部分の宛先の下部には「写真の使用肖像権は 株式会社 建築商売に属するものとする。」との記載があるが,請求書の宛先の下にかかる注記をすることが一般的・定型的とはいい難く,Gが顧客である原告名を「貴社」,「株式会社建築商売さま」(甲22参照)などではなく「株式会社
建築商売」と表記していることなど,Gが作成した文書と認めるには不自然又は不合理な点が多い。
  
  また,Gは,その陳述書において,上記甲4の「請書」の撮影料の対象は原告代表者とAの2名分であり,原告のウェブサイトへの掲載を想定するものであって,著作権の一切を原告に譲渡したと陳述するが,甲4の「請書」には「使用肖像権」の帰属に関する記載があるのみで,「著作権」の帰属についての記載は存在せず,その撮影対象についても「E様
撮影料一式」とされ,本件写真の被写体であるAに関する記載はない上,本件写真のデータやその撮影日時・人数を客観的に示す証拠,撮影料に関する支払の時期・金額を客観的に示す証拠,本件写真及び原告代表者の写真を原告のウェブサイトに掲載した事実及びその時期を客観的に示す証拠は存在しない。
  
  以上によれば,(証拠)をもって,原告がGから本件写真の著作権一切を譲り受けたと認めることはできない。
  
  したがって,原告に本件写真の著作権が帰属するということはできず,本件写真の撮影者ではない原告にその著作者人格権が帰属するということもできない。