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著作権判例セレクション

スクール講座情報誌の分類・インデックス・アイコン一覧等の編集著作物性ないしその侵害性が争点となった事例

▶平成170329日東京高等裁判所[平成16()2327]
() 控訴人は,各種学校等(以下「スクール」)及びその講座内容等の情報を掲載した情報誌「ケイコとマナブ」(以下「控訴人情報誌」といい,その首都圏版,関西版及び東海版を総称して「控訴人各情報誌」という。)を編集,発行しており,被控訴人は,これと同様の情報を掲載した情報誌「ヴィー・スクール」(以下「被控訴人情報誌」といい,その首都圏版,関西版及び東海版を総称して「被控訴人各情報誌」という。)を編集,発行している。
控訴人は,原審において,被控訴人に対し,(1)被控訴人による被控訴人各情報誌の編集,発行は,①控訴人各情報誌平成14年4月号のモノクロで印刷され,広告主から出稿されたスクール情報及び講座情報が掲載された広告記事が分類,配列されて掲載されている部分(以下「分野別モノクロ情報ページ」),②同分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し・カプセル,③同「学べる内容から探せるスーパーINDEX」(以下「スーパーインデックス」),④同スーパーインデックスの大分類・小分類表示,⑤同「通学アイコン一覧表」(以下「控訴人通学アイコン一覧表」)及び⑥同「通信アイコン一覧表」(「原告通信アイコン一覧表」)の各編集著作権を侵害すると主張して,被控訴人各情報誌の製作,印刷,製本,発売及び頒布の差止めなどを求めた。
原判決は,上記(1)①は,個々の具体的な広告記事を素材としてとらえた場合には,編集著作物に該当するが,被控訴人各情報誌は,控訴人の編集著作権を侵害するものではなく,上記(1)①の編集体系自体,及びは,編集著作物ということはできず,また,被控訴人に不法行為に該当する行為も認められないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。

2 各著作物の編集著作物該当性及び被控訴人による著作権侵害の成否について
2-1 分野別モノクロ情報ページについて
(1) 分野別モノクロ情報ページの編集著作物該当性について
ア 上記の前提となる事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。
() 控訴人情報誌東海版平成14年4月号には,モノクロで印刷され,控訴人の広告主から出稿されたスクール・講座情報が掲載された分野別モノクロ情報ページ(106頁~234頁)があり,これらのページは,紙面の前小口の端から約1.5センチメートル内の部分に当該ページに掲載されているスクール・講座情報の内容を端的に示す文言がツメ見出しとして記載され,本文部分は,1ページに1ないし9校の通学講座に関するスクール・講座情報が掲載され,各スクールごとに,①スクール名,②住所,③最寄駅,④スクールの特徴を示すアイコン(「スクール便利ポイント」),⑤カプセル(講座内容を表す分類指標),⑥講座の特徴を示すアイコン(開講時間,受講制度,レベル,講師に関する事項等,講座・コース独自の特長及びメリットに関する「特長アイコン」と,受講料の支払方法及び割引に関する特長,メリットに関する「○得情報アイコン」がある。),⑦資料請求番号,⑧コース名,⑨講座開講日時・費用,⑩入学金・受講料の割引を示すマーク,⑪コース内容,⑫スクール情報,⑬地図,⑭交通案内及びフリースペースから構成され,これらの情報は,「情報の見方」(74頁)の記載に従って配置されている。
() 上記分野別モノクロ情報ページ(106頁~234頁)において,スクールは,ツメ見出しの分類により,「英会話」(106頁~121頁),「外国語&語学の仕事」(121頁~126頁),「パソコン」(126頁~139頁),「デジタルクリエイティブ」(140頁~148頁),「エンジニア」(149頁~152頁),「ビジネス資格&スキル」(152頁~158頁),「建築・インテリア・CAD」(159頁~169頁),「フラワー」(170頁~178頁),「マスコミ・ファッション・デザイン」(179頁~180頁),「キレイ」(181頁~190頁),「癒し&健康」(191頁~197頁),「医療&福祉・教育」(198頁~204頁),「専門スキル」(205頁~206頁),「フード&料理」(207頁~212頁),「ミュージック」(213頁~217頁),「絵画・アート・書&クラフト」(218頁~221頁),「文化教養」(221頁~223頁),「スポーツ&乗り物」(224頁~228頁),「ダンス」(228頁~234頁)の順に配列されている。
() 上記ツメ見出し及びカプセルは,読者による各スクール・講座情報の検索や比較検討を容易にするため,控訴人において,上記記載の方針に従って設定したものであり,控訴人情報誌東海版平成14年4月号におけるカプセルの種類は866,ツメ見出しの種類は19である。
イ 上記認定の事実によれば,控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ(106頁~234頁)は,広告主から出稿されたスクール・講座情報を素材として,これらの素材を,読者の検索及び比較検討を容易にするため,五十音順等の既存の基準ではなく,控訴人の独自に定めた分類,配列方針に従って配列したものであり,その具体的配列は創作性を有するものと認められるから,編集著作物に該当するということができる。しかしながら,上記ア()の配置方針自体は,スクール名,住所,最寄駅,コース名,地図などの読者が当然に必要とする情報を誌面に割り付ける際の方針,すなわち,アイデアにすぎず,表現それ自体ではない部分である。また,上記ア()の分類自体も,同様にアイデアにすぎず,表現それ自体ではない部分であると認められる上,仮に,分類項目を素材としてとらえることができるとしても,スクール・講座情報を掲載する情報誌において,読者による検索の便宜のため,同種のスクールをまとめて分類する必要があることは,当然のことであり,その分類項目も,英会話,外国語,パソコン,資格など,実用性の高いスクール・講座情報を先に,音楽,海外,スポーツなど,趣味性の高いスクール・講座情報を後に,かつ,類似するものが近接したページに掲載されるよう19種類のツメ見出しの分類に従って配列したにすぎないものであるから,その選択,配列に表現上の創作性を認めることはできない。
控訴人は,上記具体的なスクール・講座情報及び具体的な編集物である控訴人情報誌東海版平成14年4月号を離れ,分類,配列体系の項目である「学ぶ内容」ないし編集体系を構成する分類項目を素材とし,編集体系を表現としてとらえるべきであると主張する。しかしながら,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照),アイデアなど表現それ自体でない部分は,著作権法の保護の対象ではないと解すべきところ,控訴人の主張する具体的な編集物を離れた編集体系自体は,上記のとおり,選択,配列のアイデアにすぎないというべきであり,また,仮に,分類項目を素材としてとらえることができるとしても,その選択,配列に表現上の創作性を認め得ないものであるから,これを著作権法の保護の対象と解することはできない。したがって,控訴人の上記主張は,いずれにしても採用することができない。
(2) 被控訴人による著作権侵害の成否について
 ア 控訴人は,被控訴人が,カテゴリー別スクール情報ページを掲載した被控訴人情報誌東海版平成14年10月号から同年12月号を編集,発行した行為は,控訴人の編集著作物の複製権又は翻案権を侵害すると主張するので,検討する。
上記の前提となる事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。
()
イ 上記認定の事実によれば,被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号)のカテゴリー別スクール情報ページは,被控訴人の広告主から出稿されたスクール・講座情報を素材として,これらの素材を,上記ア()()の配置方針及び分類により掲載したものであるところ,その配置方針及び分類は,控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ(106頁~234頁)の配置方針及び分類と類似しているものの,これらの点は,いずれも上記控訴人情報誌の表現それ自体でない部分又は表現上の創作性が認められない部分である。
そこで,進んで,スクール情報・講座情報の具体的配列について見ることとし,控訴人情報誌及び被控訴人情報誌とも,スクール・講座情報は,スクールごとに掲載されているから,控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおけるスクールの配列と被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号におけるスクールの具体的配列を対比する。
() 控訴人情報誌東海版平成14年4月号において,スクールは,例えば,「英会話」(106頁~121頁)の分類中では,「CROSSROADS」(106頁上段),「NOVA」(同頁中,下段),「ECC」(107頁)・・・「YHG英語セミナー」(121頁上段中)の順に,「パソコン」(126頁~139頁)の分類中では,「きりゅうパソコン教室」(126頁下段左),「日本パソコン学院アビバ」(127頁),「Winパソコン塾」(128頁上段),「NECパソコンファミリースクウェア名駅校/新岐阜校」(同頁中,下段)・・・「おさや総合スクール」(139頁上段右),「パソコンカレッジガリレオ」(同段左),「中部大栄教育システム」(同頁中,下段)の順に配列されている。
() これに対し,被控訴人情報誌東海版平成14年10月号において,スクールは,上記「英会話」に対応する「英語,英会話をマスターしたい!」(174頁~185頁)の分類中では,「ルクス」(174頁上段左),「NOVA」(同頁中,下段),「KTC英会話名古屋校」(175頁)・・・「REDWOODS ACADEMY」(185頁上段右)の順に,上記「パソコン」に対応する「パソコンを自由に操りたい!」(187頁~200頁)の分類中では,「ももたろうパソコン教室矢場校」(187頁上段左),「ももたろうパソコン教室昭和橋校」(同頁中段右),「ももたろうパソコン教室春日井校」(同段左),「中部コンピュータ学院本校」(同頁下段)・・・「アルファ・インストラクタ・アカデミー」(200頁)の順に配列され,その配列が上記()の配列と同一性又は類似性があると認めることはできず,他の分類に係る配列についても,両者の配列に同一性又は類似性があると認めることはできない。そして,このことは,被控訴人情報誌東海版同年11月号及び同12月号について見ても同様である。
ウ 以上対比したところによれば,控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ(106頁~234頁)と被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号のカテゴリー別スクール情報ページは,配置方針及び分類は類似しているものの,その具体的配列は,同一性又は類似性があると認めることはできず,上記類似性を有する部分は,表現それ自体でない部分又は表現上の創作性が認められない部分であって,上記各カテゴリー別スクール情報ページから上記分野別モノクロ情報ページの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないから,上記各カテゴリー別スクール情報ページは,上記分野別モノクロ情報ページを複製ないし翻案したものということはできない。
また,控訴人は,控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおける素材が,特定のスクール講座の広告記事であるとしても,そこに掲載される広告の広告主と,被控訴人情報誌東海版各号のカテゴリー別スクール情報ページに掲載される広告の広告主は,多くが一致していること,被控訴人が,被控訴人情報誌東海版の対象とする地域を,控訴人情報誌東海版と同一の東海地方に設定し,控訴人情報誌東海版に掲載されている広告主を見て,その広告主を対象に営業を行っていることは明らかであることなどを挙げて,素材であるスクール・講座情報に関する依拠性も明らかであると主張する。しかしながら,被控訴人が控訴人情報誌東海版に掲載されている広告主を対象に営業を行ったとしても,そのこと自体は,何ら違法ということはできず,また,広告主の多くが一致していたとしても,当該広告主から控訴人に出稿されたスクール・講座情報と被控訴人に出稿されたスクール・講座情報は,別のものであるから,控訴人主張の上記事実をもって,被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号のカテゴリー別スクール情報ページが控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページに依拠しているということはできない。
エ 以上検討したところによれば,被控訴人が,カテゴリー別スクール情報ページを掲載した被控訴人情報誌東海版平成14年10月号から同年12月号を編集,発行した行為は,控訴人の編集著作物の複製権又は翻案権を侵害するということはできない。
2-2 分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し・カプセルについて
(1) 分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し・カプセルの編集著作物該当性について
控訴人は,控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分類,配列体系は,分野別モノクロ情報ページ(106頁~234頁)中のツメ見出し,カプセルとしてそれぞれ表現され,全体として編集著作物に該当するというべきであり,控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し・カプセルは,編集著作物として著作権法上の保護を受けるものというべきであると主張する。控訴人情報誌東海版平成14年4月号の分野別モノクロ情報ページにおいて,スクールは,ツメ見出しの分類により,上記の順に配列されているところ,ツメ見出し及びカプセルは,読者による各スクール・講座情報の検索や比較検討を容易にするため,控訴人において,上記記載の方針に従って設定したものであり,そのカプセルの種類は866,ツメ見出しの種類は19であることは,上記のとおりである。
しかしながら,具体的な編集物を離れた編集体系自体は,選択,配列のアイデアというべきであって,著作権法の保護の対象と解することはできないことは上記のとおりであり,分野別モノクロ情報ページ中のツメ見出し,カプセルも選択,配列のアイデアにすぎないというべきである。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(2) 被控訴人による著作権侵害の成否について
以上のとおり,控訴人情報誌東海版平成14年4月号分野別モノクロ情報ページ(106頁~234頁)中のツメ見出し・カプセルは,編集著作物ということはできないから,被控訴人が,被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号のカテゴリー別スクール情報ページにおいて,小分類・大分類を表示した被控訴人各情報誌各号を編集,発行した行為は,控訴人各情報誌のツメ見出し・カプセルの編集著作物の複製権又は翻案権を侵害するということはできない。
2-3 スーパーインデックスについて
(1) スーパーインデックスの編集著作物該当性について
控訴人は,素材である分類項目を分類,配列する一連の行為に創作性を認めることができるから,大分類・小分類による分類,配列体系は,全体として編集著作物に該当するというべきであり,控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックス(78頁~85頁)は,編集著作物として著作権法上の保護を受けるものというべきであると主張するので検討する。
ア 上記の前提となる事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。
控訴人情報誌東海版平成14年4月号には,控訴人の広告主から出稿されたスクール・講座情報を,大分類と小分類から成る2段階の分類を行った上,スクール名を配列し,当該スクールに係るスクール・講座情報の掲載ページ数とともに,資料請求のための「共通はがき」の利用の可否,控訴人サイトでの情報検索の可否,通学と通信教育の別,割引の有無を知ることができるようにしたスーパーインデックス(78頁~85頁)がある。スーパーインデックスにおいては,読者が常設ツメ及び特集ツメに収録されている講座情報を比較検討し,かつ,容易にその掲載ページを検索できるようにするため,スクール・講座情報を,上記記載の観点から,分類,配列したものであり,スーパーインデックスにおける大分類は,ツメ見出しと共通するものもあるが,ツメ見出しより細分化された項目となっており,小分類は,カプセルに対応するものとなっている。
イ 上記認定の事実によれば,控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックス(78頁~85頁)は,広告主から出稿されたスクール情報・講座情報を素材として,これらの素材を,読者の検索及び比較検討を容易にするため,五十音順等の既存の基準ではなく,控訴人の独自に定めた分類,配列方針に従って配列したものであり,その具体的配列に創作性を有するものと認めることができ,編集著作物に該当するということができる。しかしながら,上記分類自体は,アイデアにすぎず,表現それ自体ではない部分であると認められる上,また,仮に,分類項目を素材としてとらえることができるとしても,その選択,配列に表現上の創作性を認めることができないことは,上記のとおりである。
ウ 控訴人は,上記具体的なスクール・講座情報及び具体的な編集物である控訴人情報誌東海版平成14年4月号を離れ,大分類・小分類による分類,配列体系が全体として編集著作物に該当するというべきであると主張する。しかしながら,控訴人の主張する具体的な編集物を離れた編集体系自体は,選択,配列のアイデアにすぎないというべきであり,また,仮に,分類項目を素材としてとらえることができるとしても,その選択,配列に表現上の創作性を認め得ないものであるから,これを著作権法の保護の対象と解することはできない。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(2) 被控訴人による著作権侵害の成否について
ア 控訴人は,被控訴人が,カテゴリー別スクール情報ページを掲載した被控訴人情報誌東海版平成14年10月号から同年12月号を編集,発行した行為は,控訴人の編集著作物の複製権又は翻案権を侵害すると主張するので,検討する。
() 被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号には,カラーで印刷され,被控訴人の広告主から出稿されたスクール・講座情報を,大分類と小分類から成る2段階の分類を行った上,スクール名を配列し,当該スクールに係るスクール・講座情報の掲載ページ数とともに,資料請求のための「共通または専用はがき」の利用の可否,通学と通信教育の別,資格取得向けの講座であるか否か,割引の有無を知ることができるようにしたカテゴリー別インデックスがある。
() そこで,控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックス(78頁~85頁)におけるスクールの配列と被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号におけるスクールの具体的配列を対比する。
控訴人情報誌東海版平成14年4月号スーパーインデックスにおいて,スクールは,例えば,大分類「英会話・英語」中の小分類「英会話」(78頁右欄)の中では,「NEW LEAF ACADEMY」,「カイズ外語学院」,「NO BORDERS イングリッシュスクール」,「ルクス」・・・「ALC」の順に,大分類「パソコン」中の小分類「パソコン」(79頁右欄)の中では,「きりゅうパソコン教室」,「マルチメディアスクールWAVE」,「ドゥックパソコン塾」,「アルファ・マンツーマン・アカデミー」の順に配列されている。
 これに対し,被控訴人情報誌東海版平成14年10月号のカテゴリー別インデックス(100頁~107頁)において,スクールは,上記小分類「英会話」に対応する「英会話」(100頁右欄,中欄)の中では,「アートブレイン アカデミー イングリッシュスクール」,「愛知大学エクステンションセンター」,「UP TO YOU」,「イーオン」・・・「REDWOODS ACADEMY今池北」の順に,上記小分類「パソコン」に対応する「パソコン」(101頁右欄,中欄)の中では,「アドバンス パソコンスクール」,「牛若丸パソコンスクール」,「AID パソコンスクール」,「NECパソコンファミリースクウェア新岐阜校」・・・「わかるとできる豊明校(本間塾)」の順に配列され,その配列が上記スーパーインデックスの配列と同一性又は類似性があると認めることはできず,他の分類に係る配列についても,両者の配列に同一性又は類似性があると認めることはできない。そして,このことは,被控訴人情報誌東海版同年11月号及び同12月号について見ても同様である。
 イ 以上対比したところによれば,控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックス(78頁~85頁)と被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号のカテゴリー別インデックスの具体的配列は,同一性又は類似性があると認めることはできず,上記各カテゴリー別インデックスから上記スーパーインデックスの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないから,上記各カテゴリー別インデックスは,上記スーパーインデックスを複製ないし翻案したものとはいえない。
 ウ 以上検討したところによれば,被控訴人が,カテゴリー別インデックスを掲載した被控訴人情報誌東海版平成14年10月号から同年12月号を編集,発行した行為は,控訴人の編集著作物の複製権又は翻案権を侵害するということはできない。
2-4 スーパーインデックスの大分類・小分類表示について
(1) スーパーインデックスの大分類・小分類表示の編集著作物該当性について
控訴人は,控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックス(78頁~85頁)の大分類・小分類表示は,当該分類,配列体系を構築する行為に創作性を認めることができるから,スーパーインデックスの大分類・小分類表示は,編集著作物として著作権法上の保護を受けるものというべきであると主張する。控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックスの大分類・小分類表示は,読者が常設ツメ及び特集ツメに収録されている講座情報を比較検討し,かつ,容易にその掲載ページを検索できるようにするため,スクール・講座情報を,上記記載の観点から,分類,配列したものであり,スーパーインデックスにおける大分類は,ツメ見出しと共通するものもあるが,ツメ見出しより細分化された項目となっており,小分類は,カプセルに対応するものとなっていることは,上記のとおりである。
しかしながら,具体的な編集物を離れた編集体系自体は,選択,配列のアイデアというべきであって,著作権法の保護の対象と解することはできないことは上記のとおりであり,スーパーインデックスの大分類・小分類表示も選択,配列のアイデアにすぎないというべきである。したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(2) 被控訴人による著作権侵害の成否について
以上のとおり,スーパーインデックスの大分類・小分類表示は,編集著作物ということはできないから,被控訴人が,カテゴリー別インデックスを表示した被控訴人情報誌東海版平成14年10月号ないし同年12月号を編集,発行した行為は,控訴人情報誌東海版平成14年4月号のスーパーインデックスの大分類・小分類表示の編集著作物についての控訴人の複製権又は翻案権を侵害するということはできない。
2-5 控訴人通学アイコン一覧表について
(1) 控訴人通学アイコン一覧表の編集著作物該当性について
ア 上記の前提となる事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。
()
イ 控訴人は,控訴人通学アイコン一覧表は,上記「スクール便利ポイント」,②「特長アイコン」及び③「○得情報アイコン」の3分類を用いた分類,配列が,控訴人各情報誌の読者に,スクール・講座の比較検討ポイントを,的確に伝え,理解させる等の視点から設定されたもので,分類方法に広い選択の幅があり,だれが行っても同様になるというものではなく,高い創作性があり,編集著作物として著作権法上の保護を受けるものというべきであると主張するので,検討する。
各種情報誌において,アイコンは,誌面に記載された情報を,キーワードやロゴなどを用いて簡潔に表示したものであり,少ないスペースに多くの情報を掲載し,読者による情報相互間の比較が容易にできるよう,一般的に広く用いられ,その場合,読者にアイコンの意味が理解できるよう,使用されるアイコンを整理し,これに簡潔な説明を付したアイコン一覧表を作成して掲載することは,当裁判所に顕著である。そして,控訴人情報誌及び被控訴人情報誌のように,広告主から出稿されたスクール・講座情報を掲載した情報誌において,「そのスクールが持っている立地条件,設備のほか,受講生が受けられるサービスなど」(控訴人通学アイコン一覧表上段「スクール便利ポイント」の説明),「講座・コース独自の特長・メリット・・・開講時間,受講制度,レベル,講師など」(同中段「特長アイコン」の説明)及び「講座・コースの受講料の支払い方法や,割引に関する特長・メリット」(同下段「○得情報アイコン」の説明)は,読者が当然に関心を持つ点であり,その内容である,①「スクール便利ポイント」の「駅前」,「シャワー完備」,「駐車場有り」など,②「特長アイコン」の「予約制」,「土日OK」,「初心者対象」など,③「○得情報アイコン」の「給付制度対象」,「分割分納」などは,いずれも上記関心を持つ点に係る必要な情報であると認められるから,これら各情報に係るアイコン71種類を選択したことに,創作性があるとは認められない。また,これら各情報を,①「そのスクールが持っている立地条件,設備のほか,受講生が受けられるサービスなど」(同一覧表上段「スクール便利ポイント」の説明)に関する「スクール便利ポイント」(23種類),②「講座・コース独自の特長・メリット・・・開講時間,受講制度,レベル,講師など」(同中段「特長アイコン」の説明)に関する「特長アイコン」及び③「講座・コースの受講料の支払い方法や,割引に関する特長・メリット」(同下段「○得情報アイコン」の説明)に関する「○得情報アイコン」の三つに分類した点も,スクール・講座情報のうち,①には主としてスクール情報に関するアイコンを,②には主として講座情報に関するアイコンを,③には支払情報に関するアイコンを分類したにすぎないと認められ,その分類,配列に創作性があるということはできない。
ウ したがって,控訴人通学アイコン一覧表は,アイコンの選択,配列に創作性があるということはできないから,編集著作物に該当するということはできない。
(2) 被控訴人による著作権侵害の成否について
以上のとおり,控訴人通学アイコン一覧表は,編集著作物ということはできないから,被控訴人が,被控訴人通学アイコン一覧表を表示した被控訴人各情報誌各号を編集,発行する行為は,控訴人各情報誌の控訴人通学アイコン一覧表の編集著作物についての控訴人の複製権又は翻案権を侵害するということはできない。
2-6 控訴人通信アイコン一覧表について
(1) 控訴人通信アイコン一覧表の編集著作物該当性について
ア 上記の前提となる事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。
()
イ 控訴人は,控訴人通信アイコン一覧表は,上記「特長アイコン」及び②「○得情報アイコン」の2分類を用いた分類,配列が,控訴人各情報誌の読者に,スクール・講座の比較検討ポイントを,的確に伝え,理解させる等の視点から設定されたもので,分類方法に広い選択の幅があり,だれが行っても同様になるというものではなく,高い創作性があり,編集著作物として著作権法上の保護を受けるものというべきであると主張するので,検討する。
各種情報誌において,アイコン及びアイコン一覧表を掲載していることは,上記のとおりであるところ,控訴人情報誌及び被控訴人情報誌のように,広告主から出稿されたスクール・講座情報を掲載した情報誌において,「講座・コース独自の特長・メリット・・・受講に関する制度やフォローシステムなど」(控訴人通信アイコン一覧表上段「特長アイコン」の説明)及び「講座の受講料の支払い方法や割引に関する特長・メリット」(同下段「○得情報アイコン」の説明)は,読者が当然に関心を持つ点であり,その内容である,①「特長アイコン」の「スクーリング」,「無料体験」,「卒業時資格取得」など,②「○得情報アイコン」の「給付制度対象」,「分割」,「分納」などは,いずれも上記関心を持つ点に係る必要な情報であると認められるから,これら各情報に係るアイコン36種類を選択したことに,創作性があるとは認められない。また,これら各情報を,①「講座・コース独自の特長・メリット・・・受講に関する制度やフォローシステムなど」(同一覧表上段「特長アイコン」の説明)に関する「特長アイコン」及び②「講座の受講料の支払い方法や割引に関する特長・メリット」(同下段「○得情報アイコン」の説明)に関する「○得情報アイコン」の二つに分類した点も,スクール・講座情報のうち,①には主としてスクール・講座情報に関するアイコンを,②には支払情報に関するアイコンを分類したにすぎないと認められ,その分類,配列に創作性があるということはできない。
ウ したがって,控訴人通信アイコン一覧表は,アイコンの選択,配列に創作性があるということはできないから,編集著作物に該当するということはできない。
(2) 被控訴人による著作権侵害の成否について
以上のとおり,控訴人通信アイコン一覧表は,編集著作物ということはできないから,被控訴人が,被控訴人通信アイコン一覧表を表示した被控訴人各情報誌各号を編集,発行する行為は,控訴人各情報誌の控訴人通信アイコン一覧表の編集著作物についての控訴人の複製権又は翻案権を侵害するということはできない。
2-7 以上検討したところによれば,控訴人の著作権に基づく各請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。
3 被控訴人の不法行為の成否について
控訴人は,被控訴人は,被控訴人各情報誌において,控訴人各情報誌の広告記事・インデックスの配列方法,アイコン一覧表,レイアウト及びFAXシートを模倣し,また,控訴人の運営する控訴人サイトの手法を模倣し,被控訴人サイトを運営して,被控訴人各情報誌を発行する行為は,控訴人の獲得してきた媒体としての信用にただ乗りし,控訴人の顧客を奪取するという不正競争的意図を有するものであって,著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を違法に侵害するものとして,不法行為を構成すると主張する。
しかしながら,控訴人各情報誌の配列方法,アイコン一覧表,レイアウト及びFAXシート並びに控訴人の運営する控訴人サイトの手法は,著作権法上の保護を受けるものではなく,控訴人がその独占的使用を主張し得る筋合いのものではないから,被控訴人においてこれらのノウハウを使用する行為は,それがデッド・コピーに当たるなど自由競争の範囲を逸脱したものと認められる特段の事情がある場合を除き,何ら違法性を帯びるものではないところ,被控訴人各情報誌及び被控訴人サイトは,控訴人各情報誌及び控訴人サイトをデッド・コピーしたものであると認めることができないことは,以上の判示に照らして明らかであり,他に,上記の特段の事情の存在をうかがわせるに足りる証拠はない。
したがって,被控訴人に控訴人主張のような不法行為に該当する行為を認めることはできないから,控訴人の不法行為に基づく請求も,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。