Kaneda Legal Service {top}
  
  著作権判例セレクション
   一般人を撮影した動画の一部等が許可なくネット上に投稿された事例につき、著作権及び肖像権侵害を認定した事例
  
  
  ▶令和2年9月24日東京地方裁判所[令和1(ワ)31972]
  
  (注) 本件は,原告らが,被告に対し,原告Aの著作物であり原告Bを被撮影者とする動画の一部等が,被告の提供するプロバイダを経由してインターネット上のウェブサイトに投稿されたことによって,原告Aの著作権並びに原告Bの肖像権及び名誉権が侵害されたところ,各損害賠償請求権の行使のために必要であると主張して,それぞれ,プロバイダ責任制限法4条1項所定の発信者情報開示請求権に基づき,上記の各権利侵害に係る発信者情報である別紙記載の各情報(「本件各情報」)の開示を求めた事案である。
  
  なお、氏名不詳者は,令和元年9月19日午前2時59分33秒頃,有限会社が開設したインターネット上のウェブサイトである「ホストラブ」(「本件掲示板」)に,別紙記載の画像(「本件画像」)を添付して,別紙「投稿内容」欄記載の投稿(「本件投稿」)をした。
  
  
  1 認定事実
  
  前提事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
  
  ⑴ 原告Aは,平成30年12月19日,妻である原告Bと共に食事のため「角平」という蕎麦屋を訪れた際,その様子を,原告Bを被撮影者とし構図等に配慮した上で,動画に撮影した。
  
  原告Aは,上記の動画に,「角平」,「(省略)」という文字を挿入して加工することにより動画(以下「本件動画」という。)を作成した。
  
  ⑵ 原告Aは,本件動画を,インスタグラムというインターネット上の投稿サイトに,ストーリーという投稿された動画を24時間保存する機能を利用して投稿した。
  
  氏名不詳者は,上記投稿サイトから本件動画を入手した。
  
  その後,本件動画は,上記投稿サイトから削除された。
  
  ⑶ 氏名不詳者は,本件動画の一部(経過時間0分7秒の部分)を本件画像として保存し,令和元年9月19日午前2時59分33秒頃,本件掲示板に,本件画像を添付して本件投稿をした。本件投稿により,本件動画が複製され,送信可能化された。
  
  ⑷ 原告Bは,特段の公的活動をしていない。
  
  2 争点①(本件投稿によって原告Aの著作権が侵害されたことが明らかといえるか。)について
  本件動画は,原告Aが,その思想等を創作的に,映画の効果に類似する視聴覚的効果を生じさせる方法で表現したものであるから,著作物に該当し,原告Aがその著作権を有するものと認められる。
  
  氏名不詳者は本件投稿により本件動画の一部を複製し送信可能化したものである(前記1⑶)ところ,原告Aは同氏名不詳者に本件動画の利用を許諾したことはなく,したがって,氏名不詳者による本件投稿によって,原告Aの本件動画の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたことが明らかであると認められる。
  
  3 争点②(本件投稿によって原告Bの肖像権が侵害されたことが明らかといえるか。)について
  
  人の肖像は,個人の人格の象徴であるから,当該個人は,人格権に由来するものとして,これをみだりに利用されない権利を有する。そして,当該個人の社会的地位・活動内容,利用に係る肖像が撮影等されるに至った経緯,肖像の利用の目的,態様,必要性等を総合考慮して,当該個人の人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超える場合には,当該個人の肖像の利用は肖像権を侵害するものとして不法行為法上違法となると解される。
  
  これを本件についてみると,本件画像は,原告Bを被撮影者とするものである。本件画像が含まれる本件動画の撮影及びそれをインターネット上の投稿サイトに投稿したのは原告Aであり,原告Bは夫である原告Aにこれらの行為を許諾していたと推認され,本件画像の撮影等に不相当な点はなく,氏名不詳者は上記投稿サイトから本件動画を入手したものではある。しかしながら,本件動画は24時間に限定して保存する態様により投稿されたもので(前記1⑵),その後も継続して公開されることは想定されていなかったと認められる上,原告Bが,氏名不詳者に対し,自身の肖像の利用を許諾したことはない。原告Bは私人であり,本件画像は原告Bの夫である原告Aが原告らの私生活の一部を撮影した本件動画の一部である。そして,本件画像は,原告Aの著作権を侵害して複製され公衆送信されたものであって(前記2),本件投稿の態様は相当なものとはいえず,また,別紙投稿記事目録記載の投稿内容のとおりの内容に照らし,本件画像の利用について正当な目的や必要性も認め難い。これらの事情を総合考慮すると,本件画像の利用行為は,社会生活上受忍すべき限度を超えるものであり,原告Bの権利を侵害するものであると認められる。
  
  したがって,本件投稿によって原告Bの肖像権が侵害されたことが明らかであると認められる。
  (以下略)