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  著作権判例セレクション
   設計図書の公表性が問題となった事例
  
  
  ▶平成1年05月23日横浜地方裁判所[昭和60(行ウ)5]▶平成3年05月31日東京高等裁判所[平成1(行コ)69]
  設計図面自体は一般的に公衆に提供されることを予定している著作物ではなく、設計者が設計委託者に対し部数を限つて設計図書を提供するのが通例で、設計図書自体を公表することは通常の場合考えられないが、このことを理由に設計図書に関し著作権の一態様である公表権が否定されるものではないというべきである。
  
  ところで、設計者が設計委託者に対し設計図書を提供する場合、部数を限つて設計図書を提供するのが通例であるが、委託者がその設計図書を利用してなす建築も一回かつ一棟に限られていること、設計委託契約上の権利義務は相手方の書面による同意がなければ第三者に譲渡できないとされていることからすると委託者に設計図書を提供することは公衆に提供することに当らず、また、建築確認申請に際し設計図書を添付、提出したことも、建築確認という行政手続のために当該行政庁に提出したものであり、公衆に提供したことに当らない。
  
  [控訴審同旨]
  
  設計図書自体は一般的に公衆に提供されることを予定されている著作物ではなく、設計者が設計委託者に対し、部数を限って設計図書を提供するのが通例であろうし、本件においても、○○企画が委託を受けて設計した場合、設計図書の著作物は○○企画に属すること、○○企画が委託者に提出する設計図書は5部以内とし、5部を超える場合は有償とすること、委託者がこの設計図書により建物を建てることができるのは一回かつ一棟限りであること、設計委託契約上の権利義務は相手方の書面による同意がなければ第三者に譲渡できないことが認められるのであるから、本件各図面が、公開を予定して作成され、一般に広く公開されているということはできないし、また、建築確認申請書に添付することは、建築確認という行政手続のために当該行政庁に提出したにすぎず、そのことだけで公表に付したと理解することはできない。