Kaneda Legal Service {top}
著作権判例セレクション
講演のネット上でのライブ配信につき、公表権侵害を認めなかった事例
▶平成28年12月15日東京地方裁判所[平成28(ワ)11697]
(注)本件は,原告ら4名による講演を被告がインターネット上で配信したことに関し,原告らが被告に対し,原告らそれぞれの著作物である上記講演中の各原告の口述部分に係る公表権及び公衆送信権が侵害されたと主張して,所定の損害賠償金等の支払いなどを求めた事案である。
1 争点(1)(本件配信による公表権侵害の成否)について
本件講演は原告らそれぞれの思想を言語により表現したものであり,各原告の発言部分ごとに言語の著作物に該当するところ,前記前提となる事実
によれば,本件講演会は,定員86名の会場で行われ,対象者が限定されておらず,事前に申込みをすれば誰でも参加することができるものであったというのである。そうすると,本件講演は,不特定又は多数の者に対して行われたものであって,原告らの口述により公衆に提示され,公表されたと認められる。
この点につき,原告らは,本件配信はライブ配信であり,本件講演が原告らによる口述と同時に配信されるため,本件配信の時点では本件講演は未公表であった旨主張する。しかし,本件配信は原告らが公に口述するのに先立って本件講演を配信するものではなく,原告らによる口述を前提として,これをそのまま配信するものであるから,本件配信は原告らが公表した著作物についてされたものというほかない。
したがって,本件配信による公表権侵害は成立しない。