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  著作権判例セレクション
   広告写真の著作者名の省略につき法19条3項を適用した事例
  
  
  ▶平成17年01月17日大阪地方裁判所[平成15(ワ)2886]
  
  5 争点(5)(本件使用時の氏名不表示の違法性の有無)について
  
  著作権法19条3項は、著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができると規定する。
  
  これを本件についてみるに、本件写真は、「セキスイツーユーホーム」の宣伝誌である「ツーユー評判記」に掲載するために、すなわち「セキスイツーユーホーム」の宣伝広告に用いる目的で撮影されたものであるところ、本件使用も、まさに「セキスイツーユーホーム」の広告である新聞広告に用いたものである。そして、原告本人尋問の結果によれば、一般に、広告に写真を用いる際には、撮影者の氏名は表示しないのが通例であり、原告も従来、この通例に従ってきたが、これによって特段損害が生じたとか、不快感を覚えたといったことはなかったことが認められる。
  
  上記の事情に照らせば、本件使用は、その目的態様に照らし、原告が創作者であることを主張する利益を害することはなく、公正な慣行にも合致するものといえるから、同項によって原告の氏名表示を省略する場合に該当するというべきである。
  
  この点につき、原告は、本件使用は無断使用であることを理由に、同項の適用はない旨主張する。しかしながら、著作者人格権と著作権は別個の権利であり、前者は著作者に専属するものであるのに対し、後者は著作者が他者に譲渡することができるものであることに照らせば、著作物の使用が著作権者の許諾を受けたものであるか否かは、同項の適用の可否とは関係がないものというべきであるから、原告の上記主張は採用することができない。
  
  よって、その余の点について判断するまでもなく、著作者人格権(氏名表示権)に基づく原告の請求は理由がない。