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著作権判例セレクション

顔の画像のトリミングが問題となった事例

令和3114日大阪地方裁判所[令和2()1995]
2 著作物性の有無(争点3-1)について
前記のとおり,本件画像は,本件元画像を原告の鼻部分を中心に円状にトリミングして作成されたものと認められる。
本件元画像は,髪型を整えて化粧を施した原告が,正面を向きながら大きく目を開いて顔をやや左に傾け,左手中指を右斜め上方に向けて鼻部左側の隆起を始める部分付近に伸ばし当て,左手示指を左耳付近に伸ばすように左側顔部の輪郭に沿うようにして伸ばすなどして左手を顔に当てるポーズを決めた状態で,原告の胸部から額部分付近までの部位を撮影したものであり,撮影の方向及び角度等は,原告の目の高さから正面又はそれよりわずかに上方向から撮影したものといえる。このような撮影の方向,構図等に鑑みると,本件元画像は,その程度はさておき,撮影者である原告の思想及び感情を創作的に表現したものといえる。そうである以上,本件元画像は,写真の著作物ということができるから,その著作者である原告は,本件元画像の著作権を有する。これに反する被告の主張は採用できない。
3 著作権及び著作者人格権の侵害の成否(争点3-2)について
前記のとおり,本件画像は,本件元画像を原告の鼻部分を中心に円状にトリミングして作成されたものであり,原告の鼻部分ほぼ全体のほか,●省略●までの範囲がそこには含まれる。前記2のとおり,本件元画像は,その撮影の方向,構図等に創作性が認められるところ,原告の鼻部分に係る構図はその創作性の一環をなすものである。このため,本件画像は,本件元画像の表現上の本質的な特徴の同一性を維持しているものといえる。
したがって,本件投稿者は,既存の著作物である本件元画像に依拠し,かつ,表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えたものであるが,これに接する者が本件元画像の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを有形的に作成したものと認められる。
そうすると,本件投稿者による本件投稿は,少なくとも原告の本件元画像に係る複製権ないし翻案権を侵害するものといえる。これに反する被告の主張は採用できない。
4 違法性阻却事由の存否(争点3-3)について
(1) 本件において,著作権者である原告の同意その他の本件投稿につき違法性阻却事由の存在をうかがわせる具体的事情はおよそ見当たらない。
これに対し,被告は,原告が自己の公開した画像につき第三者の複製,翻案等をある程度認容する意思があったなどと主張する。しかし,ツイッターその他のソーシャルネットワーキングサービスの利用者が自ら画像をアップロードしたことをもって,当該画像の複製等を許諾する意思を示す事情と認めるに足りる証拠はない。
また,原告が本件アカウントの管理者に対して警告等を行わなかったからといって,それ自体をもって本件投稿者に対する損害賠償請求権の行使が権利の濫用に当たるということはできない。その他被告がるる指摘する事情を考慮しても,この点に関する被告の主張は採用できない。
(2) そうである以上,その余の点につき検討するまでもなく,原告については,本件投稿による侵害情報の流通によってその権利である著作権(複製権ないし翻案権)が侵害されたことが明らかであるといえる。