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著作権判例セレクション

ブログに投稿した自撮り写真

令和31117日東京地方裁判所[令和3()21012]
() 原告は,自らを被写体として,自己の携帯電話端末で原告写真を撮影し,自らのブログ「XBlog」に投稿した。

1 争点1(本件投稿による権利侵害の明白性)について
争点1-1(著作権侵害の明白性)について
ア 前提事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告写真1については,原告が,原告から見て左斜め方向を向いている様子を自撮りした写真であること,原告写真2については,原告が,他の女性と一緒にピースサイン等のポーズを取っている様子を自撮りした写真であること,原告写真3については,原告が,美顔器を左頬に当ててカメラ目線でいる様子を,原告の体が斜めになるような構図で自撮りした写真であること,以上の各写真は,いずれも構図,撮影ポジション・アングルの選択等において一応の創意工夫がされていること,他方,本件投稿写真の左上にある写真は原告写真1を,本件投稿写真の右上にある写真は原告写真2を,本件投稿写真の右下にある写真は原告写真3を,それぞれ複製した写真であること,原告は,本件発信者に原告写真の使用を許諾したことはないこと,以上の事実が認められる。
上記認定事実によれば,原告写真は,構図,撮影ポジション・アングルの選択等を一応工夫したことにより,撮影者の個性が現れているといえるから,原告写真は,撮影者の思想又は感情を創作的に表現したものとして,著作物に該当するものと認めるのが相当である。
そうすると,本件投稿は,著作権者である原告の許諾を得ずに,原告写真を有形的に再製した上で,公衆送信するものであるから,少なくとも原告写真に係る原告の複製権及び公衆送信権を侵害するものと認められる。
したがって,本件投稿によって原告の著作権が侵害されたことは明らかであるといえる。
イ これに対し,被告は,原告写真は,プロのカメラマンが撮影したものとは異なり,創作性があるということはできないから,著作物ではない,原告やその子供の身を案じる本件投稿の内容からすると,本件写真の掲載を原告写真に係る複製権及び公衆送信権の侵害と捉えることには疑問がある,原告写真は,原告のブログで公表された写真であるから,ファンによって好意的に拡散された場合に常に複製権等を侵害したものと断ずることができるかは不明であるなどと主張する。
しかし,①については,原告写真が,構図,撮影ポジション・アングルの選択等において,撮影者である原告の個性が現れ,原告の思想又は感情を創作的に表現するものであることは,上記において説示したとおりであり,②及び③については,複製権や公衆送信権侵害の成否を左右する事情ということはできない。その他に,被告提出に係る準備書面及び証拠を改めて検討しても,上記判断を左右するに至らない。
したがって,被告の上記主張は,いずれも採用することができない。
小括
以上によれば,争点1のその余の点につき判断するまでもなく,本件投稿による権利侵害の明白性を認めることができる。