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  著作権判例セレクション
   競艇予想サイトの批評投稿を募るウェブページでの画像掲載につき、適法引用を認めなかった事例
  
  ▶令和3年9月3日東京地方裁判所[令和3(ワ)6718]
  (2)
争点1-2(原告画像の著作権の帰属)
  
  証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告画像は,日本情報コンサルタンツ株式会社が原告の考案したキャッチフレーズ等を基に作成し,株式会社オフィスキューブのカメラマンが同社の職務上撮影した原告写真を組み合わせたものであり,原告は,両社から,これらの成果物に係る著作権を譲り受けたことが認められる。
  
  したがって,原告画像の著作権は,原告に帰属する。
  
  (3)
争点1-3(適法な引用の成否)について
  
  ア 証拠によれば,本件ウェブサイトは,各種競艇予想サイトについて,予想が当たるか否かを比較したり,これらを利用した者等から批評の投稿を募り,この投稿を競艇予想サイトごとに掲載したりするウェブサイトであること,本件ウェブページは,本件ウェブサイトのうち,原告及び原告ウェブサイトを批評することを目的とするウェブページであること,本件ウェブページの上部に本件画像が掲載され,「皆様からのTOP
TREND(トップトレンド)の情報提供をお待ちしております。」との記載に続いて,「運営会社詳細」として,原告ウェブサイト名並びに原告の商号,運営者,電話番号及び住所が記載されているが,本件発信者自身の原告又は原告ウェブサイトに対する批評は記載されていないこと,上記「運営会社詳細」の記載の更に下には,多数人から投稿された原告又は原告ウェブサイトに関する批評が順次記載され,それらの投稿は,原告の予想やビジネスモデルの適否に関するものがほとんどであり,他方で,最上段には「これが競艇のプロ集団のやるですか」,中段には「写っている人間が金持ってそうに見えないってところ(笑)」,最下段には「ガッツリ顔出してるけど,ここのサイトはどんな感じなんかね?」といった投稿も存在すること,記載された投稿を全て除くと,本件画像は本件ウェブページのうちかなりの大きさを占めていることが認められる。
  
  イ 他人の著作物を引用した利用が許されるためには,その方法や態様が,報道,批評,研究等の引用目的との関係で,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであり,かつ,引用して利用することが公正な慣行に合致することが必要であるというべきである。
  
  前記アの認定事実によれば,本件ウェブページは,主として,第三者から投稿された原告又は原告ウェブサイトに関する批評を掲載するためのウェブページであり,本件発信者自身は,原告の商号や運営者等の情報を記載したものの,原告又は原告ウェブサイトに関する批評を全く記載しておらず,ましてや本件画像に関する意見は何も記載していないということができる。また,本件発信者は,原告に関する情報の提供を呼び掛けてはいるが,本件画像に関する意見を求めたものではなく,実際に投稿された批評を見ても,原告の予想やビジネスモデルの適否に関するものがほとんどであり,むしろ,本件画像を単に揶揄するようなものも含まれている。これらの事情に鑑みると,本件ウェブページにおいて,批評の対象である原告ウェブサイトを示すために,本件画像を掲載する必要性は乏しいといわざるを得ない。
  
  さらに,前記アのとおり,第三者からの投稿を除くと,本件画像は,本件ウェブページにおいてかなりの大きさを占めており,また,本件ウェブページを子細に検討しても,その出典が明確に記載されているとは認められない。
  
  以上によれば,本件ウェブページにおいて本件画像を掲載することによる原告画像を利用した行為は,その方法や態様からして,原告又は原告ウェブサイトを批評する投稿を募り,これを掲載するという目的との関係で,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであるとはいえないし,引用して利用することが公正な慣行に合致するともいえないから,適法な引用(著作権法32条1項)には該当しない。
  
  ウ これに対して,被告は,①本件ウェブページは原告に対する口コミ等が中心であり,本件画像は本件ウェブページ全体の表示割合のごく一部を構成するにすぎないから,本件ウェブページと本件画像とを明瞭に区別して認識することができる上,分量的にも内容的にも,原告に対する口コミ等が主であり,本件画像は従であること,②本件ウェブページは競艇予想サイトを批評することを目的とするところ,原告ウェブサイトがどのようなものかを掲載することはその重要な要素であり,「運営会社詳細」として引用元も記載されていることからすると,本件発信者が本件ウェブページ
に本件画像を掲載することにより原告画像を引用したことは適法な引用であると主張する。
  
  しかし,上記①について,前記前提事実,前記1(1)及び前記アによれば,本件ウェブページにおける最上段の投稿には本件画像の最上部にある「競艇予想のプロ集団」というフレーズに類似した「競艇のプロ集団」との記載があり,中段の投稿には「写っている人間」との,最下段の投稿には「ガッツリ顔出してるけど」との各記載があることからすると,本件ウェブページの投稿は,いずれも本件画像が掲載されていることを前提としたものであり,本件発信者が本件画像を本件ウェブページに掲載した時点で,第三者からの投稿はなかったと推認するのが相当である。そうすると,前記アのとおり,本件ウェブページには本件発信者自身の原告又は原告ウェブサイトに関する批評は記載されておらず,本件画像が掲載された時点において,本件画像は本件ウェブページにおいてかなりの大きさを占めていたものであるから,本件画像が分量的にも内容的にも従たる役割しか果たしていなかったとはいえない。
  
  また,上記②について,前記アの認定事実によれば,本件ウェブページは,競艇の予想が当たるか否かという観点から,原告又は原告ウェブサイトを批評することを目的としたものであることは明らかであり,本件画像はそのような批評の対象となるものとはいえないから,本件画像を掲載する必要性があったとはいえない。本件画像を見れば,原告ウェブサイトにおける画像であろうことは推測できるが,URLの記載はないし,いつの時点のものかも明らかではないから,引用元が明確かつ正確に記載されたとはいえない(前記前提事実のとおり,原告画像一部は,かつての原告ウェブサイトの一部分を切り取ったものである。)。
  
  したがって,被告の上記各主張はいずれも採用することができない。