Kaneda Legal Service {top}

著作権判例セレクション

著作権の帰属につき、著作権登録(第一発行年月日登録)の事実を援用した事例

令和7217日大阪地方裁判所[令和5()11871]
() 原告は、平成21年4月22日、文化庁に対し、本件作品1(別紙として本件作品2を含むもの)の著作権者として、第一発行年月日の登録を申請したところ、同年6月5日、原告の申請に係る登録がされた(登録番号第3364815 号の1)。なお、被告は、原告が同申請を行うことについて異議を述べなかった。また、原告が、本件作品1及び同2を製作したことは争いがない。

6 争点6(本件各作品及び本件システムが職務著作に該当するか)について
(1) 前記1ないし5のとおり、本件作品2、同3及び本件システムは、いずれも、著作物に該当しないか、又は著作物に該当したとしても原告に著作権等が帰属するものではない。
(2) 本件作品1について検討する。
本件作品1が、原告の単著論文であることには争いがない。そして、被告が、原告に対し、本件作品1の執筆を指示したとはうかがわれず、本件作品1にも、原告の肩書として被告における職位等は何ら記載されていない。一方、被告は、原告が、本件作品1につき、文化庁に著作権の登録をしたことについても是認している。
そうすると、仮に本件作品1が職務著作に該当するとしても、少なくとも、被告は、原告が本件作品1の著作権者とすることを認めていたものと認められる(著作権法15条1項は、個別の著作物についてなお被使用者に著作権を留保することを否定するものではない。)。
被告は、上記のような取扱いや、本件覚書等は、原告の被告における職位に合わせた対応をしたのみであり、著作権者であることを認めたものではないと主張する。しかし、将来の改変に際し、原告の許諾を要するかを検討する場合は別段、一度公にすればその段階で内容が変更されることのない本件作品1について原告名義での著作権の登録を是認していたことに鑑みれば、少なくとも本件作品1に関する限りでは、被告の主張は採用できない。
よって、本件作品1は、職務著作に該当するか否かにかかわらず、原告が著作権等を有するものと認められる。