Kaneda Legal Service {top}
  
  著作権判例セレクション
  
   プログラム(Microsoft
Excel VBAを使用して作成されたもの)の著作物性を否定した事例
  
  
  ▶令和6年12月23日東京地方裁判所[令和6(ワ)70189]
  
  1 争点⑴(本件プログラムの著作物性の有無)について
  
  ⑴ 著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであるから、思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でないもの又は表現上の創作性がないものは、著作物に該当せず、著作権法上保護されるものとはいえない。
  
  これを本件についてみると、原告は、本件プログラムのソースコードのうち、①製品名のドロップダウンリストを表示する機能に関する部分(以下「①部分」という。)、②顧客の名前を検索、確定する機能に関する部分(以下「②部分」という。)、以上の2点を赤色でマーキングし、当該2点を創作的表現部分として主張するものと解されるところ、原告は、裁判所からの繰り返しの釈明にかかわらず(第1回口頭弁論調書参照)、これらが創作的表現に該当する理由を具体的に主張するものではない。
  
  この点を措き、原告の主張について精査しても、①部分については、原告の主張は、ActiveXコントロールのコンボボックスを使用し、フォントやフォントサイズをカスタマイズ可能にするという、単なるアイデアをいうものにすぎない。念のため、①部分の内容についてみても、証拠及び弁論の全趣旨によれば、エクセルにおいて標準仕様として用意されているActiveXコントロール及びActiveXコントロールのコンボボックスを用いて項目をドロップダウンリストとして選択可能とさせるものであって、これらを使用してフォント名及びフォントサイズをカスタマイズする手法自体は、極めてありふれたものにすぎない。更に念のため、これらの機能に対応するソースコードについてみても、使用されている指令及びその組合せにおいて、原告の個性が表れているものといえないことは明らかである。
  
  また、②部分についても、原告の主張は、ユーザフォーム画面のコンボボックスで、カタカナ行のドロップダウンリストから目的のカタカナ行をマウスで選択して、表示されたリストボックスから目的の名前と電話番号をマウスでクリックすることで顧客の名前を選択可能にするという、単なるアイデアをいうものにすぎない。念のため、②部分の内容についてみても、証拠及び弁論の全趣旨によれば、エクセルにおいて標準仕様として用意されているユーザフォームのコンボボックスとリストボックスを用いるものであり、コンボボックスとリストボックスを用いてマウスで値を選択させ、リストボックスの項目が選択されたときに実行されるChangeイベントを用いることにより、マウスで選択された値を取得することを可能とするものであって、これらの手法自体は、いずれも極めてありふれたものにすぎない。更に念のため、これらの機能に対応するソースコードについてみても、使用されている指令及びその組合せにおいて、原告の個性が表れているものといえないことは明らかである。
  
  これらの事情の下においては、原告の主張は、アイデアをいうものに帰し、本件プログラムに表現上の創作性を認めることはできない。
  
  したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。
  
  ⑵ 以上によれば、本件プログラムは、著作物に該当するものとはいえず、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は、理由がない。