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著作権判例セレクション

951(商業用レコードの二次使用料を受ける権利)の意義と解釈

昭和570531日東京地方裁判所[昭和54()2971]▶昭和600228日東京高等裁判所[昭和57()1624]
著作権法第95条第1項は、「放送事業者及び音楽の提供を主たる目的とする有線放送を業として行なう者(以下この条及び第97条第1項において「放送事業者」等という。)は、第91条第1項に規定する権利を有する者の許諾を得て実演が録音されている商業用レコードを用いた放送又は有線放送を行なつた場合(当該放送を受信して再放送又は有線放送を行なつた場合を除く。)には、当該実演(著作隣接権の存続期間内のものに限る。)に係る実演家に二次使用料を支払わなければならない。」と規定しており、この規定によれば、二次使用料を受ける権利は、右規定における「当該実演に係る実演家」すなわち放送又は有線放送に用いられた商業用レコードに収録された実演を行なつた実演家に帰属すべきものと定められていることが明らかである。そして、同条は「当該実演(著作隣接権の存続期間内のものに限る。)に係る実演家に二次使用料を支払わなければならない。」と規定し、二次使用料を受ける権利は、商業用レコードに収録された実演についての著作隣接権が存続する期間内存続することを定めており、この点からみても、二次使用料を受ける権利が、商業用レコードに収録された実演と無関係にすべての実演家に帰属すべきものと解する余地はない。
したがつて、同法第95条第1項の立法の沿革が原告ら主張のとおりであり、その立法の趣旨において、労働者としての実演家のいわゆる機械的失業に対する補償の意味があつたとしても、商業用レコードに実演が録音されているかどうかにかかわりなく音楽実演家のすべてに二次使用料を受ける権利が与えられていると解すべきとする原告らの主張は、現行法の規定の文言を無視するものであり、到底採用できない。右の立法趣旨は、現行著作権制度のもとにおいて、著作権法第95条第2項ないし第11項、同法施行令第47条ないし第50条、同法施行規則第22条の規定するところにより、同法第95条第2項の定める指定団体があるときは、指定団体が、その内部的意思により、二次使用料の分配方法に関する事項を業務規程に定めるに当たり、分配を受ける者の範囲を商業用レコードにその実演が録音された実演家以外の実演家にも及ぼすことによつて、間接的に達成されることが期待されているというべきである。【すなわち、現行著作権法は右のような分配手段の導入によつて実演家一般の機械的失業に対する補償の機能を果たすことを期待する一方、二次使用料の権利の本来の帰属自体は放送等に使用された商業用レコードに収録された実演に係る実演家にあることを当然の前提としつつ、そのままでは実質上行使される余地がなくなるであろう右二次使用料を、実際に行使することのできる実効あるものとするために、前記の指定団体が結成されることを期待しているものであるというべく、このような著作権法上の仕組み照らせば、】被告が商業用レコードに録音される実演を行なつていない実演家の団体にも二次使用料を分配しているとしても、そのことによつて、被告が、すべての実演家が二次使用料を受ける権利を有することを自認したことにはならないことはいうまでもない。
以上によれば、商業用レコードにその実演が録音されている実演家であるかどうかにかかわらずすべての実演家が被告に対し二次使用料請求権を有することを前提とする原告らの本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。
[控訴審同旨]