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著作権判例セレクション

書籍をスキャナーで読みとる行為は「複製」に該当するか

平成251030日東京地方裁判所[平成24()33533]
2 争点(1)(本件事業による複製行為の有無)について
被告ビー・トゥ・システムズは,同社が行っているのは書籍の加工であり,複製には該当しない旨主張するので,以下,本件事業における書籍の電子ファイルを作成する行為が書籍の複製に該当するか否かにつき判断する。
著作権法にいう複製とは,「印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製することをい」う(著作権法2条1項15号)ところ,本件事業においては,書籍をスキャナーで読みとり,電子化されたファイルが作成されているものであるから,書籍についての有形的再製が行われていることが明らかであり,上記複製に当たる行為が行われているということができる。
これに対し,被告ビー・トゥ・システムズは,裁断済み後の本としての体裁をなしていない原本は廃棄ないし返却するなどして,1冊の本から一つの電子データが作成されていることや,電子データを販売するなどはしていないことなどから,同社の行為は複製には該当しない旨主張する。
しかし,本件事業においては書籍を有形的に再製した物である電子ファイルが作成されており,これにより複製行為が行われていることは明らかであって,その複製の元となる書籍の原本自体の複製後の帰趨や,複製物である電子ファイルがその後販売されているか否かは複製権侵害の成否に影響しないというべきである。
したがって,被告ビー・トゥ・システムズの上記主張は採用することができない。