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著作権判例セレクション
書籍複製代行の法30条1項該当性
▶平成25年10月30日東京地方裁判所[平成24(ワ)33533]
(2)
次に本件事案に著作権法30条1項が適用されるか否かにつき検討する。
著作権法30条1項は,著作権の目的となっている著作物は,個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは,同項1号ないし3号に定める場合を除き,その使用する者が複製することができる旨規定している。そうすると,同条項にいう「その使用する者が複製する」というためには,使用者自身により複製行為がされるか,あるいは使用者の手足とみなしうる者によりこれがされる必要があるというべきところ,既に検討したとおり,被告タイムズ及び被告ビー・トゥ・システムズは,本件事業における複製の主体であって,使用者自身でも,使用者の手足とみなしうる者でもないのであるから,本件においては,著作権法30条1項にいう「その使用する者が複製する」の要件を満たすとはいえず,したがって,同条が適用されるものではないと認めるのが相当である。
なお,被告タイムズは,同社のウェブサイトにおいて,同社は利用者の私的使用の範囲内での本件事業の利用を求めているとし,それに沿う証拠として,同社のウェブサイトの記事(乙B6)を提出する。乙B6によれば,同社のウェブサイトにおいて,「本サービスはお客様に代わって書籍を裁断及びスキャンする内容となりますので,対象書籍はお客様が自ら所有する書籍に限らせていただきます。また,書籍から変換された電子データは,私的使用の範囲内でのみ利用し,ネット上で公開したり,誰でも閲覧できる状態にしないようご注意ください。」と記載されている。
しかし,前記(1)のとおり,あくまで複製行為の主体は被告タイムズであると認められるところであって,乙B6の上記記載は,その認定を左右するものではない。
(3)
以上によれば,被告タイムズ及び被告ビー・トゥ・システムズの上記各主張は,いずれも採用することができない。