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著作権判例セレクション

1131項の適用事例

令和498日東京地方裁判所[令和3()3201]令和5420日知的財産高等裁判所[令和4()10115]
5 争点 5(本件輸入行為による原告の著作権侵害(みなし侵害)の成否)について
(1) 前記認定のとおり、本件CDは、外国で製作され、VGM社名義で日本国内に輸入されて、日本国内に所在するAmazonの物流拠点に送付されたものである。また、本件輸入行為の前提となる本件録音・複製行為のうち、ハンガリーでのオーケストラ演奏及びその録音は、日本国内で行われていたとしたならば、原告の本件楽曲に関する原著作者としての権利(複製権。法 28 条、21 条)を侵害するものである。
したがって、本件CDは、国内において頒布する目的をもって、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作権の侵害となるべき行為により作成された物といえることから、本件CDを輸入した本件輸入行為は、原告の著作権を侵害するものとみなされる(法 113 1 1 号)。
(2) これに対し、被告らは、VGM社が外国で製作された本件CDを日本に送付する行為は輸出であって「輸入」ではない旨や、ハンガリーでのオーケストラ演奏及びその録音は、【そもそも日本の著作権法及び司法権の管轄にない】旨を主張する。
しかし、前記 1 のとおり、本件輸入行為は、控訴人ら自身の行為に含めて評価するのが相当なもの】であり、また、外国で【製作】された本件CDを日本国内で頒布する目的をもって行ったものである。そうである以上、本件輸入行為をもって本件CDの「輸入」(法 113 1 1 号)に当たるものと見るのが相当である。また、【ハンガリーでのオーケストラ演奏及びその録音は日本の司法権の管轄にないとの控訴人らの主張が、国際裁判管轄についていうものであるとすると、そもそも本件訴えでは応訴管轄が認められるとともに、控訴人Yは国内に住所があり、控訴人会社はその主たる事務所又は営業所が国内にある上、後記のとおり、控訴人らによる本件編曲行為、本件録音・複製行為及び本件譲渡・配信行為は控訴人らによって実行された相互に関連した一連の行為であって国内において本件譲渡・配信行為の結果が発生しているものであるところ、本件訴えは、これらの行為につき、不法行為に基づく損害賠償請求をするともに、違法行為により権利利益を侵害され、又は侵害されるおそれがあることを理由とする差止及び廃棄請求であることからして、我が国の裁判所に裁判権が認められる(民訴法3条の2第1項、2項、3条の3第8号)。さらに、ハンガリーでのオーケストラ演奏及びその録音は我が国の著作権法の管轄にないとの控訴人らの主張が、準拠法についていうものであるとすると、上記のとおり、控訴人らによる本件編曲行為、本件録音・複製行為及び本件譲渡・配信行為は控訴人らによって実行された相互に関連した一連の行為であって国内において本件譲渡・配信行為の結果が発生しているものであって、我が国よりも明らかに密接な関係がある他の地があるともいえないことに照らすと、我が国の著作権法が適用されるものである(法の適用に関する通則法17条、20条)。】
その他被告らが縷々主張する事情を考慮しても、この点に関する被告らの主張は採用できない。