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著作権判例セレクション

差止めの射程範囲(書籍中に侵害写真が含まれていた事例)

平成181221日東京地方裁判所[平成18()5007]
4 争点4(本件書籍全体の差止め及び廃棄が認められるか)について
証拠によれば,本件書籍は,Cを含む外国人の日本における活動を評伝風に描いたノンフィクションであること,本件書籍における本件写真の使用部分は,口絵の写真中の一部にすぎないことが認められる。
以上のとおり,本件写真の著作権を侵害している箇所は,本件書籍のごく一部分である。しかし,本件書籍が本件写真を口絵に掲載して,全体として一冊の本として出版発行されている限りは,本件書籍の出版により,原告の意思に反して本件写真の無断複製物を頒布することになるのであるから,本件写真を掲載した本件書籍の印刷・出版発行の差止めを認めざるを得ない(換言すれば,本件写真が掲載されている部分を削除すれば,本件書籍を頒布することは可能である。)。ただし,本件書籍はノンフィクションの書物であって,写真部分と文章部分は可分であり,本件書籍の大半を占める文書部分とその余の写真部分は,本件写真の著作権侵害とは無関係な部分であることからすれば,本件写真の著作権を侵害している箇所に限って,その廃棄が認められるというべきである。